日本クルーズ&フェリー学会講演会(2017)
(2017/11/11)



日本クルーズ&フェリー学会
設立総会 2010年10月9日
2011講演会2011年11月12日
2012講演会2012年11月17日
2013講演会2013年10月26日
2014講演会2014年11月22日
2015講演会2015年11月21日
2016講演会2016年11月12日

クルーズ客船&フェリー研究会
第14回 2010年2月27日
第13回 2002年7月13日
第12回 2000年11月18日~19日


日本クルーズ&フェリー学会の総会と講演会(後援:横浜市港湾局)が横浜みなと博物館 日本丸訓練センター(横浜 桜木町)で開催され153名の参加者がありました。講演会の後は、大さん橋からロイヤルウィングに乗船し懇親会がありました。

横浜みなと博物館 日本丸訓練センター

■講演会



講演内容(要約)
①クルーズ&フェリーの最新トレンド

池田 良穂
(日本クルーズ&フェリー学会
事務局長)
■2016世界のクルーズ人口は2420万人で前年比+4.3%。中国を中心としたアジアが牽引した。
アジアのマーケットシェア12.4%(前年比+46%) ※全世界を100%とした場合。
中国のクルーズ人口比0.15%(前年比+50%) ※中国の人口を100%とした場合。
■クルーズ運航会社の経営は2016年急激に改善した。
大手3社の利益率は13%~17%(前年は10%を切っていた)
■アジアにおけるクルーズ会社の経済効果(乗船客の消費は含まれない)は1100億円(造船・修繕が339億円)
食料品の現地調達が増加。
■中国南部クルーズマーケットの急増により沖縄のクルーズ客船寄港数は急増
沖縄の寄港数2015年219回、2016年387回、2017年557回見込み。
特に宮古島の寄港数増が顕著。2015年13回、2016年86回、2017年140回見込み。
宮古島は地元の受入れが積極的で、乗船客の満足度が高い。
■世界の航洋クルーズ客船の新造発注ブーム到来
発注の半数は15万総トン以上のメガシップ。発注残は90隻
■世界各地のリバークルーズも急拡大2016年は30隻竣工、26隻発注。
Viking River Cruisesが世界展開し、この5年に52隻を新造。
■欧州フェリー会社の経営は改善傾向。新造フェリーは小型化傾向。高速フェリーの復活の兆し。
■日本の長距離フェリーは、トラックが絶好調、乗用車・旅客も堅調。
モーダルシフトの追い風、トラックドライバーの不足。外国人観光客の利用。
②客船の安全と国際条約

石原 彰
(国土交通省海事局
船舶安全基準室 室長)
■客船の安全に関する国際条約SOLAS(international convension for the Safety Of Life At Sea)は、
タイタニック事故を契機に1914年に制定。
■IMO(convension in International Maritime Organization)が1958年に設立され、SOLASを維持・改訂
■最新のSOLASは1974年採択、1980年発効。
37年間に157回改正され、締結国は163ヵ国(全船腹量の99.14%)
■大規模事故の度に再発防止を織り込み
ハード要件の強化(バウドアからの浸水=>ドアの開閉表示装置、漏水検知装置の設置)
ソフト要件の導入(事故の80%はヒューマンエラー)
■客船の大型化への対応。安全寄港(safe return to port)の考えを取入れ。
大勢の乗客、乗員が救命ボートで避難するより、本船に留まった方が安全なケースが多い。
その為の対策(損傷時復原性基準の見直しなど)を織り込み。
③国土交通省におけるクルーズ振興の取り組みについて

石原 洋
(国土交通省港湾局
クルーズ振興室 室長)
■2016年の訪日クルーズ旅客数は199.2万人(前年比+78%)
寄港回数は2017回(前年比+30%) 外国船1443回、日本船574回。2017年は2700回の見込み。
■明日の日本を支える観光ビジョン(2016/3/30)
目標外国人旅行者数 2020年4,000万人、2030年6,000万人 (2015年実績1974万人)
目標訪日クルーズ旅客 2020年500万人
■クルーズ船の受入環境の緊急整備。既存の貨物船用バースをクルーズ船用に改良。
長い船長=>桟橋の部分延長、ドルフィン桟橋の設置、風圧が大きい=>防舷材、係船柱の整備
■クルーズ旅客の利便性向上。秋田港クルーズ列車のトライアル運航。
■クルーズ商談会(船社<->港湾管理者)の開催。クルーズ船社への寄港地情報の一元的発信
■国際旅客船拠点形成港湾協定制度を創設
官民連携:公共(港湾設備、岸壁の確保)、民間クルーズ船社(旅客ターミナルビル整備への投資)
利点:公共(将来需要の顕在化:途中で船社に逃げられない)、クルーズ船社(優先岸壁使用、長期的な配船計画)
④日本外航客船協会の活動
クルーズ&フェリーのさらなる振興のために

山口 直彦
(日本外航客船協会 会長)
■1990年にJOPA(日本外航客船協会)を設立。
①安全運航・船舶保全への取組 ②規制緩和への取組 ③振興活動・広報活動への取組
■クルーズアドバイザー制度創設(2003年)。消費者へのクルーズに関する説明不足改善が目的。
累計:クルーズマスター63名、クルーズコンサルタント6631名。
■クルーズオブザイヤー表彰制度創設(2008年)。良質のクルーズ商品、サービスの奨励。
⑤横浜港と客船

志澤 政勝
(横浜みなと博物館 館長)
■北米・ハワイ移民の送り出し港(明治30年代~大正)
北米への移民増加により船が大型化。ミネソタ(20,718総トン、ステアリッジ1,067人、1904年竣工)
■関東大震災発生時に被災市民救助(大正12年)
エンプレス・オブ・オーストラリア3000人、アンドレ・ルボン2000人、三島丸4000人、ぱりい丸1800人、ろんどん丸2000人
■観光船の来訪(明治末期~昭和初期)毎年2隻~6隻
・明治43年最初の世界一周船寄港(クリーブランド(ハンブルグ・アメリカライン)16,960総トン、船客760人)
・2つの客船ターミナル完成。新港ふ頭(昭和2年)、大さん橋(昭和3年)
 新港ふ頭の臨港カフェはホテルニューグランド経営。大さん橋のレストラン・バーは帝国ホテル経営。
・サンフランシスコ客船出帆日に臨港列車運行(東京駅~横浜港駅)
・ホテル連絡バスの運行(ホテルニューグランド、帝国ホテル、富士屋ホテル)
■南米移民船再開(昭和27年~昭和48年)
最後の移民船はにっぽん丸(旧あるぜんちな丸)で、第一回世界一周クルーズでもあった(昭和48/2/14)。
■定期航路客船の終焉 APL太平洋定期航路終了(昭和48年)
⑥パネルディスカッション
どうなる日本のクルーズマーケット!!
現代クルーズの進出とインターポーティング

池田 良穂:司会
糸川雄介
(コスタクルーズ日本支社 支社長)
堀川 悟
(カーニバルジャパン 社長)
赤井 伸郎
(大阪大学 教授)
■日本発着クルーズの現状と今後の計画
◇プリンセスクルーズ
乗船客数:2017年75,000人、2018年10万人超の計画
2018年はダイヤモンドプリンセスを通年配船し、供給を増やす。インターポーティングを採用し、6港に新たに寄港。
2020年は新造船を配船する予定。
◇コスタクルーズ
2017年の日本人客の集客は50,000人の目標に対して30,000人の見込み。
日本海は北朝鮮問題の影響があった。台風の影響大きく、寄港地変更などで苦労した。
2018年は、夏場は日本海、春と秋は太平洋クルーズを実施する。
2019年は、日本海を増やしたい。

■日本発着クルーズの問題、課題
◇プリンセスクルーズ
・カボタージュでコースが制限される。休みが取り難い日本の事情がある。
 クルーズに対する間違ったイメージ(料金が高い、揺れる)を、いち早く日本に配船して払拭したかった。
◇コスタクルーズ
・多くの日本人にとってクルーズは自分が乗る対象ではなかったが、シニア層は身近に乗船経験者が増えて変わってきた。
・クルーズ販売の流通を変えなければならない。現状の販売方法で低料金クルーズを販売すると、旅行会社は行き詰まる。
 カジュアルクルーズの旅客に対して、プレミアムやラグジュアリと同じ客対応はできない。
 アメリカの販売コスト:カジュアル3$、プレミアム30$、ラグジュアリ200~250$
・各寄港地での1人当たりの乗船客の消費は船のクラスで変わるハズだが、各港が期待する額は同じ。

■日本発着クルーズの海外での販売
◇プリンセスクルーズ
・2015年から海外の販売チャネルで販売した。フライ&クルーズで外国人が乗船可能
 2017年の全体75,000人。日本人44,000人、外国人31,000人
 最近日本国内での旅行コストが上昇しており、フライ&クルーズは安価で効率よく日本を旅行できる手段となっている。
◇コスタクルーズ
・カジュアル船は運航先で集客するのがビジネスモデルだった。日本85%、海外15%
・2017年からヨーロッパでも販売開始。 2017年10月のクルーズ 日本60%、ヨーロッパ20%、アジア20%
※沖縄、台湾クルーズ(8泊)と済州島クルーズ(6泊)の連続クルーズをヨーロッパで販売したが、台風の影響で
 沖縄、台湾クルーズは行き先がウラジオストクに、済州島クルーズは東京に長期停泊後、日本国内クルーズになった。
 14泊で寄港したのはウラジオストクと神戸、小松島のみだった。ヨーロッパ人の内30人はロシア人だった。

■インターポーティングの利点、問題
◇コスタクルーズ
・日本の大きな市場のどこからでも集客できる。
・経営資源、営業資源が分散してしまう。
・各港ごとの枠を守らずに販売すると、結果的に空室が多くなってしまう。
・台風などで抜港すると(下船予定の旅客が居残っている)、部屋のやりくりがまるでパズルの様な状況になる。
◇プリンセスクルーズ
・2018年からインターポーティングを採用。冬場のクルーズの安定的な集客を期待。
⑦横浜市の客船寄港推進の取組

小林 英二
(横浜市港湾局
みなと賑わい振興部 部長)
■横浜港の課題
・客船の岸壁予約の重複 ・ベイブリッジをくぐれない超大型客船の増加 ・乗客の市外(主に東京方面)への流出
■横浜港の目指す姿
・小型から超大型まであらゆるタイプの客船の受入 ・4隻以上の大型客船の同時受入
・東日本、東北、北海道方面へのクルーズ展開の拠点化
■新たな客船ターミナルの整備
・新港ふ頭の新ターミナル整備(2019年春頃) ・大黒ふ頭南側自動車専用岸壁での超大型船受入(2019年春頃)
・将来の4拠点化(大さん橋、新港、山下、本牧A突堤)
・国際旅客船拠点形成港湾の指定による船社との連携(大さん橋:郵船クルーズ、新港ふ頭:カーニバル)
⑧スマートクルーズアカデミーの挑戦

赤井 伸郎
(大阪大学 教授)
■スマートクルーズアカデミーの目的
・参加した学生の論理的思考向上 ・若者の視点、新たな視点での、クルーズマーケット、港湾、寄港地、観光への提言
■これまでの研修クルーズとの違い
これまでの青年の船(小型船の1隻チャーター、コスト高、多額の税金投入、継続性が保てない)
スマートクルーズアカデミー(クルーズ船に一般の乗客と混乗、コスト低)
■2012年から開催し、参加累積398名
⑨C to Sea プロジェクト
~国民の皆様に海に目をむけてもらうための取組~

小野 雄介
(国土交通省
海事局企画室 室長)
■C to Sea プロジェクトとは 
目的:一般市民、特に若者・子供に海への関心を促す
背景:若者の海離れ(海事人材の確保困難、海事産業の衰退)
■当面の取組
(1)気軽に乗れるショート&カジュアルクルーズの検討
・日本ならではの船旅文化の浸透を目指す。
・船舶を観光クルーズ、海洋教育、社会支援の各目的でシェアして費用を低減する検討。
・船舶運行、企画、販売を各企業で分担して効率化を図る検討。
・モニタリングクルーズの実施:小型フェリーを利用した瀬戸内海周遊デイクルーズ(高松~直島~豊島~小豆島~高松)
(2)練習船(帆船)を活用した海洋教育・海洋思想普及
(3)「海の駅」と海洋レジャーの活性化
(4)海に関する情報の発信
⑩クルーズの歴史・余談 食堂の変遷

山田 廸生
(日本海事史学会 副会長)
■ダイニングサロンは船尾に設置(グレートブリテン1843年建造、PMアメリカ1869年建造)
帆船時代の名残りで、食堂(ダイニングサロン)は船尾中心部に設置され、それを取り囲むように両舷に客室が配置された。
食堂(ダイニングサロン)は、食事時間以外にもラウンジとして利用された。
■ダイニングサロンが船体中央部に移動(オーシャニック1870年建造)
振動防止のためスクリューから離れた船体中央部にダイニングサロンを設置した。
■ハイレベルなレストランの設置(アメリカ1905年建造、インペラトール1913年建造)
リッツ・カールトン・レストランが設置された。
■現代クルーズ船には当たり前のビュッフェレストランの歴史は浅い
ロッテルダム(5代目)のリドカフェをビュッフェ式リドレストランに改装(1969年)
ビュッフェレストランを設置した新造船はプリンセンダム(1973年建造)が最初。
■ビュッフェレストランの問題点
・海が荒れて、船が揺れると食事がとれない。特に高齢者には大問題。 ・衛生面の対応がどこまでできるか?
⑪12,000総トン型カーフェリー覚書

渡辺 孝則
(元 三菱重工)
大阪~志布志航路の「さんふうらわ さつま/きりしま」が2018年3月と6月の新造船にリプレイスされる今、
現行船について顧みた。
■船の設計の3要素 ・安定性(高さ、幅) ・強さ ・推進性能
■大型フェリーの船型の変化
・第一期(フェリー阪九、ふえにっくす、さんふらわあ)
 1層のトラック甲板、3~4層の居住区、または2層のトラック甲板、2層の居住区。船幅22m前後
・第二期(へるめす、いしかり、おーしゃんのーす)
 2層のトラック甲板、3~4層の居住区。船幅27m
 第一期から背の高さ、重心高さが大きく上昇し、その為船幅を広げた
・第三期(さんふらわあ ごーるど、フェリーきたきゅうしゅうⅡ、いずみ)
 第二期を基本にしながら多様な技術的特長を持つ。大幅な省エネ化、トラック甲板の部分的3段化。
■現行さんふうらわ さつま/きりしまの設計
・第二期型 2層のトラック甲板、4層の居住区を持つ。
・トラック搭載能力的には全幅24mで事足りたが、スタビリティの観点で全幅25.5mにした。
 全幅を広げることにより、推進性能も向上した。
・大型フェリーの設計では、エレベータと主階段の配置が重要となる。
 車両甲板での操車障害にならず、且つ乗船客の動線に配慮してレイアウトした。
⑫大型フェリーへのハイブリッドCRP推進システムの適用

上野 周作
(JMU基本計画部 総括スタッフ)
■大洗~苫小牧航路の「さんふらわあ ふらの/さっぽろ」にハイブリッドCRP推進システムを適用した。
・2機1軸の二重反転プロペラ。前後のプロペラを別々の主機で駆動。負荷が高い海象では電動機で補助。
・入港時には電動駆動に切り替え。主機はスラスター用の発電機として稼働。
・横移動は強力なスターンスラスターで対応。
・効果:燃費の大幅改善(20%) ・冗長性と信頼性確保 ・航行中の燃費向上と出入港時の操船性を両立

講演会が閉幕して会場を出ると、日本丸が綺麗にライトアップされていました

■懇親会

大さん橋に移動し、ロイヤルウィング船上での懇親会に参加しました。




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