2014日本クルーズ&フェリー学会講演会
(2014/11/22)

日本クルーズ&フェリー学会講演会 
 (於 シーサイドホテル芝弥生(東京))

過去の「日本クルーズ&フェリー学会」の講演会概要


日本クルーズ&フェリー学会の講演会が開催され100名を超える参加者がありました。 今回は初めて東京で開催され、講演会に引き続き ヴァンテアンでの船上懇親会、東海汽船橘丸による乗船会も開催されました。

講演内容(要約)
1 客船振興と港
@海洋観光の振興に向けた取り組みについて

阿部雄介(国土交通省)
・2013年の訪日外国人は約1036万人(対前年比24%増)でビジットジャパン事業を開始した2003年から倍増。 
 訪日外国人旅行者の消費は13万7千円/回で、国内旅行者(宿泊4万8千円、日帰り1万5千円)に比べて多く、1人1回当たりの経済効果が大きい。
 旅行消費額総額 訪日外国人旅行者1.4兆円、国内旅行者20.2兆円
・海洋観光の魅力は、(1)景観、(2)船への乗船体験、(3)離島の自然・文化、(4)教育としての場、(5)非日常空間としての海
・海洋観光の振興は、国だけでなく自治体や民間関係者との連携が重要。海洋観光産業の人材育成が重要。
・2015年度計画: 寄港地ふ頭でのバスへの乗り換え環境の改善。 ふ頭仮設店舗の免税許可申請の簡素化。 南鳥島の港湾整備。
A東京港におけるクルーズ客船誘致と舟運活性化について

井上直(東京都港湾局) 
・東京港のクルーズ客船来訪は、晴海客船ターミナルが完成した1991年頃は年間300回以上だったが、2008年以降低迷。 コンテナふ頭の充実とは反比例の関係。
・2014年客船誘致を本格始動。 2028年目標 客船寄港280回、東京港利用者50万人。
 2020年の東京オリンピック開催に向けて、さらなる誘致活動を展開
・新客船ターミナルはオリンピックに間に合うように「船の科学館」横に建設。商業施設を誘致して新名所としたい。晴海ターミナルの今後は地元と協議中。
B我が国のクルーズ産業発展に向けて

田中三郎(みなと総合研究財団) 
・2007年に財団内にクルーズ自主研究会を設置し、以降クルーズ関連産業の底上げを目的に取り組んで来た。
・クルーズポートセミナーを定期開催。 港湾担当者が2〜3年で交代するため、短期間で集中的にクルーズに関する知識を習得してもらう。
・第9回中国Cruise Shipping in Tianjin(2014年10月)は中国マーケットに対する関心の高さを示していた。
 カーニバルとRCCの両社長が出席。 コンベンション参加者(参加費10万円/人)は 当初想定300人が実参加者500名に増加。
2-1 内航客船:内航航路復活のシナリオ
@大阪湾内深日〜洲本航路の復活のためのフィジビリティ・スタディ

佐々木弓恵、井畑里和
(大阪府立大学) 
・かつて運行されていた深日〜洲本航路の再開について、岬町の依頼に基づき可能性を検討した。
・大阪府から洲本を訪れた観光客のうち公共交通機関を利用した14万人(往復28万人)が対象。
・運賃595円〜660円で採算がとれ、1000円が利益率最大。航路廃止時の運賃1980円は高過ぎた。
・所要時間を金額価値に置き換えた犠牲量モデルを使用。 今後、船酔いや利便性を入れたモデル化を予定。
2-2 内航客船:橘丸セッション
@東海汽船の歴史

関口昌樹
(東海汽船ファンクラブ) 
・ファンクラブは、東海汽船100周年を勝手連で祝う会として27年前に発足した。
・東海汽船の前身東京湾汽船は1889年(明治22年)に東京湾周辺で乱立していた開運会社を統合して創立。5航路21隻。
・明治大正:会社創業期 湾内から全国へ(湾内、外房、伊豆諸島航路)
・昭和戦前:貨主客従から客主貨従へ。三原山ブーム、橘丸就航(1935年)、東海汽船に改称(1942年)
・昭和20〜30年代:戦後復興期。 納涼船開始(1950年)、「アンコ椿は恋の花」ヒット(1964年)
・昭和40年代:船体整備、観光船化。高度成長、離島ブーム。 かとれあ丸就航(1969年)ブリッジ後方やエンジンケーシングに覗き窓設置。
・昭和50〜60年代:船体整備、貨客船化、高速船導入模索。離島ブーム終焉
・平成:船体規模縮小、多頻度高速輸送。ジェットフォイル就航(2002年)大島日帰り観光が実現。
A新造内航客船「橘丸」について

林洋一郎、大和邦昭
(三菱重工) 
・橘丸に求められた性能。
 (1)省エネ (2)推進システムの信頼性、島民の交通手段、生活物資の運搬。
 (3)優れた離着岸性能、黒潮の強い海流、御蔵島の就航率アップ。(4)快適性の向上
・タンデム・ハイブリッド型CRP推進方式を採用。省エネ効果は「さるびあ丸」と比べて15.6%改善。
・低速時は主機関のみ稼働させて効率航行。アジマスのみ稼働は負荷変動時の効率悪い。主機にはクラッチがないので停止するとダメージの恐れ。
・操船統合制御システム(MICOS)により、主機、可変ピッチ、アジマス、補助舵を最適コントロール。推進レバーと舵輪だけで操船可能。
B伊豆諸島航路の活性化に向けて 〜エメラルドグリーンの島々との共存〜

櫻井薫(東海汽船) 
・夏(7月〜9月)の納涼船は好調 2014年は14万人達成。
・伊豆諸島の各島では2つの港を使い分けて就航率を確保。利島と御蔵島は1港のみで就航率悪い。特に御蔵島は海流強く、岸壁短く最悪の条件。
・伊豆諸島の魅力:首都圏にある恵まれた自然環境。豊富な水産資源。経済水域保全の国家的役割。
・今後の施策:八丈島航路を大島に寄港させて、二つの航路の乗り次ぎ、ジェットフォイルへの乗り換え可能に。清水、焼津からのジェットフォイル航路開設。
3 東アジアのクルーズ&フェリー振興
@アジアクルーズ白書を読む

池田良穂(大阪府立大学) 
・アジアで初めてのクルーズ白書として、アジアクルーズ白書が発行された(アジアクルーズアソシエーション)
・アジアのクルーズ人口 130万人(2012年)  将来予測 380万人(2020年) 中国160万人、日本76.6万人
・クルーズに対する意識:海は危険。クルーズはステータスが低く、乗っても自慢できない。(日本ではステータス高すぎる)
・文化摩擦:西洋では夜ネクタイをして食事する。アジアでは夜はネクタイ外してリラックスする。休暇が短く、時期的に集中する。
・商品企画:寄港地間の距離が長く短期クルーズが難しい。日本はアジアの東端で地理的に不利。
・旅行社の人材不足(日本ではクルーズアドバイザー制が成功)。値引きの顕在化(値引きを期待して予約が遅くなる)
A大阪大学における船舶工学導入教育の一環としてのフェリー客船見学

梅田 直哉(大阪大学)
・円安効果もあり、国内造船所の船舶受注はV字回復基調。しかし造船技術者の不足が表面化。
 大学の船舶関連学科の減少。船舶関連学科からの他業界への就職増加。
・海事産業技術者の人材育成が急務。大学教育において、学生の船舶に慣れ親しむ機会を増やすことが必要。
・学部2年生に船舶海洋の入門講座を設け、その中で大阪南港停泊中のカーフェリーを訪問するカリキュラムを設定した。
・見学後のアンケート結果から、入学生の船に対する知識・経験が非常に乏しいことがわかり、乗船研修の意義の深さが明白になった。
B東アジアの船旅振興のためのフリーディスカッション
・日本はアジアの東端で不利?
 最近はタイからの旅行者も増えており、飛行機で来日して日本から船に乗るフライ&クルーズも期待大。
 プリンセスの日本発着クルーズもアメリカからの乗船客が多かった。
・日本海の新潟や舞鶴発着のクルーズが拡大する可能性は?
 新幹線や国内線とのタイアップにより可能性大。
 ロシアは、ウラジオストックとコルサコフ以外入港できず、選択肢が限られる。
・函館の状況
 函館の後にどこに行ってもらうか、他の交通機関との連携が重要。
 飛行機で日本に来た外国人に、フェリーにも乗ってもらいたい。
・その他
 空港から港までのアクセスの改善を求む。
 新規参入者に対する勉強会の開催を望む。
 将来のお客さんである子供たちにもっと船を見せる機会を作るべき。
4 日本のクルーズマーケットを読む
@ぱしふぃっくびいなす friendly & exciting cruise

岸本正則(日本クルーズ客船)
・日本のクルーズの動向
 2013年のクルーズ人口は過去最高の23.8万人(日本船11.3万人、外国船12.3万人、内航フェリー0.2万人)となった。
 外国船社の日本発着クルーズが本格化し外航クルーズ乗客数は13.8万人で前年比14.8%増となった。
 2003年3月クルーズアドバイザー認定制度が開始し、2014年度までに5437人が合格した。
・2015年ぱしふぃっくびいなすの南半球に特化した世界一周クルーズは、発売後すぐにキャンセル待ちになる人気
・JR西日本とタイアップし、シベリア鉄道の乗車も組み込んだクルーズは、鉄道of the Yearの準グランプリ(2012年)を獲得した
Aにっぽん丸クラシックディナーと朝カレー

山口直彦(商船三井客船)
・2014年は商船三井創業130周年。日本で唯一、客船事業の灯をともし続けた外交海運会社。船乗りが供するサービスを続けている。
・古いメニュ(レシピは残っていない)を元に、クラシックディナーを再現して提供した。
・昭和8年「はわい丸」、昭和14年「あるぜんちな丸」の朝食メニューにカレーを発見し、にっぽん丸の朝食に出したら好評だった。
Bロイヤル・カリビアンの日本発着と新造船クァンタム・オブ・ザ・シーズ

糸川雄介(ミキツーリスト)
・2010年〜2014年の日本発着クルーズで33,000名以上のお客さんが乗船。
・2014GWのボイジャーオブザシーズはファミリーをターゲットにしたら、2850名の乗客中18才未満は400名になった。
・ボイジャーオブザシーズは2014年に5000万ドルで大改装(11/19ドック空け)。特別レストランの増設、バーチャルバルコニーの設置。最新システムへのアップデート。
・2015年の日本発着クルーズ:アイスショーの演出&振付家のコラボイベント実施。サプライズゲストの招へいを検討中。
・新造船クァンタム・オブ・ザ・シーズをアジアに配船。乗船手続き時間の短縮。ウェアラブル機器の採用。スーツケースの在り処が分かる。ロボットのバーテンダー。
5 船旅の楽しみ
@クルーズと社交ダンスの良い関係

堀江珠喜(大阪府立大学)
・モノより感動を売る時代:一般女性のクルーズは豪華ライナーへの憧れから。ゴージャス&ロマンチックを演出するのが社交ダンス。
・船上ダンスの魅力:ヘタでもOK、正式でなくてもOK。小さく踊るのがコツ。
・ダンス音楽で重要なことは選曲。


ヴァンテアンの船上懇親会

ヴァンテアン(東京ヴァンテアンクルーズ)  船首からレインボーブリッジを臨む

北海道産直素材を使ったビュッフェディナー

さるびあ丸(東海汽船)  橘丸(東海汽船)


橘丸乗船会 東京〜三宅島

引き続き34名が橘丸に乗船して 東京〜三宅島を往復しました。 ふなむしは残念ながら都合で乗船できませんでした。

橘丸(東海汽船)


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