日本クルーズ&フェリー学会 講演会
(2011/11/12)

日本クルーズ&フェリー学会 講演会
於:大阪南港 ATCホール


昨年10月に設立された日本クルーズ&フェリー学会の講演会が開催されました。 90人を超える参加者でした。


日本クルーズ&フェリー学会
設立総会 2010年10月9日
2011新年会 2011年1月29日〜30日

クルーズ客船&フェリー研究会
第14回 2010年2月27日
第13回 2002年7月13日
第12回 2000年11月18日〜19日

1.クルーズ産業論
(1)世界と日本のクルーズ成長予測

田口 順等、池田 良穂
(大阪府立大学)
(要約)
世界と日本のクルーズ市場の現状と将来を普及率(利用者/人口)で予測

@欧州
新しく現代クルーズ客船が普及した国ほど普及速度が速い
・イギリス(英語圏):予測普及率上限15.14% 国際的で外需的なマーケット。起点港、途中寄港の両方の可能性があり、イギリス以外のクルーズ船にも乗船機会が多い
・ドイツ(非英語圏):予測普及率上限2.33%  ドイツ語圏にマーケットが限定。ドイツ人の多くはドイツ語以外を話さず、ドイツ人だけのクルーズを好む

A日本
日本のクルーズ市場(2009)は利用者200千人、普及率0.20% 普及率が低い反面、急速な成長の可能性がある
・日本の将来をイギリス、ドイツのデータから予測すると、10年後に普及率1%(ドイツ型)〜2%(イギリス型)になる。クルーズ人口に換算すると128万人〜250万人
 その前提となるのは、現代クルーズ客船の日本市場への本格参入。来年からRCIとコスタが日本市場に参入する
・日本では中国人や韓国人と混載のクルーズは成功しない(RCI見解)。日本人をターゲットにした日本発着のクルーズが必要

B北米
北米の需要は飽和状態にあり(普及率上限3.14%)頭打ち状態にある。但し2010年はクルーズ利用者数の変化を示す曲線に明らかに変化があり(オアシスオブザシーズの効果)、これを機会に新たな需要曲線に乗り移る可能性がある。普及率上限も上昇する可能性がある

C客船の動向
・かつては船社毎にカテゴリ分けされていたが、客船の大型化により一隻の中に低価格から高価格まで多彩なキャビンを備えるようになってきた
・有料レストランと一般レストランの差別化が拡大し、料理の質の違いも大きい
・この流れにより、高級路線の船社の乗客が大型船に流れる可能性がある
(2)欧州のクルーズ急成長の実体とその将来

池田良穂
(大阪府立大学)
(要約)
欧州のクルーズが急成長を遂げ、北米と並ぶ大きなマーケットになっている

@各国のクルーズマーケット
・ドイツ
クルーズ人口30万人がずっと続いていた。ドイツ船のハイクオリティクルーズと、ソ連からのチャータ船の大衆クルーズでドイツ語のみのクルーズだった。
アイーダやその他のクルーズ会社の参入後、クルーズ人口が100万人を超えた
・イギリス
エアアンドツアーズ社のマジョルカ島クルーズ(7〜8万円/1週間)がきっかけ。その後アメリカ市場の余剰船が参入して急成長した

A欧州の港湾
・イタリア チベタベッキア港
入港船は750隻(2008)で1996年の15倍になった。クルーズ客船用の岸壁として防波堤を活用したり、旅客ターミナルがテント造りであったりと、急成長に対応している。
港内は無料のシャトルバスを頻繁に走らせ、船客の便宜を図っている
チベタベッキア起点のクルーズと途中寄港は半々。世界との航空路線を持つローマ空港の存在は強み。前後泊の観光地としての魅力が高い
チベタベッキア港の発展はクルーズ会社からのアプローチに港湾側が答えた

・ギリシャ ピレウス
かつてはギリシャの船会社がカボタージュ(海外船社による国内航路の運航禁止)を利用して独占的にクルーズを実施していたが消滅し、現在はイタリア起点のクルーズの寄港地となっている。クルーズ船の寄港数は急上昇し、クルーズターミナルも急拡大している
起点港と寄港地では経済効果が大きく異なるため、クルーズ客船に関してはカボタージュの適用を止めることを検討中

クルーズの起点港となるためには、乗客のアクセスと莫大な量の食料、資材を安定的に供給できる能力が必要
コスタの中国クルーズは、ワインや肉をイタリアから空輸して賄っている。(日本の港なら問題なし)

B船舶
アメリカ市場の7万トンクラスの余剰船を欧州に回していたが、欧州でも10万トンクラスに移行しており7万トンクラスはサイズ不足になっている。
これらの船の行き先としてアジアの可能性は高い
欧州の造船所は”良い船を作るが高い” との船会社の評価があり、選択肢の拡大と競争による価格低減のために、日本の造船所への期待が高い
(3)日本のクルーズマーケット爆発への処方箋

総合討論
(要約)
@港
・日本のイミグレーションは時間が掛かり観光時間が減少する
・長崎港では長崎県の職員がイミグレーションを手伝って時間短縮に努めていたが、諸事情により中止
・隣国との近さでは、日本海側の港を利用するのは利点がある。 新潟なら東京からのアクセスも便利
・寄港地での消費は、中国人4万円、日本人2万円、アメリカ人1万円

Aターゲット
日本人が一週間以上のクルーズに頻繁に乗れる状況は直ぐにこないのでは。GWや夏休みは満席でそれ以外はガラ空き状態の恐れが高い
女性を意識したクルーズの企画になっていないのでは。この学会への女性の参加者が少ないのも問題
海外のクルーズ船に乗船する個人客が増加している実態がある。言葉の問題がクリアできれば個人客でも問題ない
”ウエイターに注文した物が来ない”とトラブルになった事がある。実は、注文したのは隣のテーブル担当のウエイターで、言葉が通じていれば問題にならなかった

Bスタークルーズは何故失敗した
スタークルーズは失敗したのに、RCIやコスタは成功するのか
スタークルーズが世界市場に乗り出すタイミングと重なり、資源をNCL買収につぎ込んだ
旨く行かないと直ぐに撤退するスタークルーズの決断の早さと、日本人によるカジノの売り上げが低かったのも影響したかも

C航空機
LCCの拡大はクルーズにとってメリットがあるかも。 かつて北米市場で採用していた航空運賃込みのクルーズ料金もクルーズ拡大に効果あるかも
2.国内フェリー
(1)新造クルーズフェリー「いしかり」
「いしかり」の投入

岡田 俊樹
(太平洋フェリー)
(要約)
@厳しい経営環境化での新船投入
・燃料油の急上昇、高止まり
・リーマンショックと、高速道路料金割引などで、利用者・車の大幅落ち込み
・東日本震災の影響で、2011年度も新造船効果が出ていない

A「いしかり」の特徴
・「エーゲ海の輝き」をデザインコンセプトに
・「きそ」の姉妹船ながら個室率は52%->55%にアップ、エレベータも3基->4基にアップ

B「いしかり」の役割
・旅客収入比率のアップ。 2010年度売り上げ  旅客・乗用車(24%)、レストラン・売店(5%)
「いしかり」のインテリアデザイン

三沢 里彩
(日建スペースデザイン)
(要約)
@「エーゲ海の輝き」
・展望エレベータは是非やりたかった。日本のフェリーで初
・風呂もエーゲ海、和室にもエーゲ海をとり入れた。「きそ」の風呂は和風

A船は自分の意思では降りられない
・インテリアは重要、デザイナの腕の振るい所が多い
・船客の立場になったデザイン、あきさせないデザイン
・たいくつさせない仕掛けを随所に
・楽しい気持ちになってもらう

B船ならではの難しさ
・振動への配慮、防火対策
・設計の最初にすべてが決定(陸上では最後まで微調整可能)
新造旅客フェリー”いしかり”および
歴代の旅客フェリーの技術的変革について

大西 克司(代行者が講演)
(三菱重工)
(要約)
@新旧いしかりの比較
・国際総トン数 31,700トン->35,000トン
・CO2  10%削減、トラック1台当たりでは13%削減
・Nox   30%削減
・個室数 72->147
・バリアフリーの推進
・居住区 9000u->10000u

A技術的変革
・「いしかり」は新損傷時復元性規制(2009年SOLAS)をフェリーで初めて適用
・船体の改良による推進効率アップ
・振動、騒音の低減(旧きその1/3〜1/5)
・推進効率を良くするためには船体を痩せさせる=>エンジンの納まりが悪くなり前方に配置する=>シャフトが長くなる
 どこに着地点を置くかは造船所のノウハウ

B運航モニタリング
・実海域での推進性能を調べるためモニタリング装置を搭載
・「きそ」の3年間のモニタリング結果
・シーマージンは−10%〜+30%で計画通り。仙台〜苫小牧の北航がマージンが高い
(2)九州商船(株)の旅客カーフェリー”万葉”の概要

野嶋 宣男
(内海造船)
(要約)
・万葉は2011年4月に就航した長崎〜五島航路のカーフェリー
・名前と船体色デザインは公募により決定
・前船と比べて30分の航海時間短縮と28%の省エネ(同じ速度場合)を実現
・バリアフリーの徹底(エレベータ、優先駐車スペース、低い階段、掴み易い手すり)
(3)超高速カーフェリーの使い道

池田 良穂
(大阪府立大学)
(要約)
@ナッチャンをチャーターマーケットで活用
・ナッチャンWorldにサイドランプ設置(設備のない港への対応)
・自衛隊での戦車の輸送テスト

Aナッチャンの利点と問題点
利点
・フェリーと高速船の一本化
・優れた対航性(荒れた海でも船酔いしにくい)
問題点
・燃料費の高騰
・引き波問題。実害があるのかどうかの判定が難しい。引き波が何cmまでなら許容かの規定もない。
3.国際フェリー
(1)パンスターフェリーの新しい戦略

舎野 祝光
(サンスターライン)
・2002/4 大阪-釜山航路開設。来年が10周年。2008年が2隻で22万人の利用が2010年は1隻で6万人。
・もっと日本人のクルーズ客を呼び込みたい。
・旅客設備の充実:船内施設の改良、大阪南港に専用ラウンジ設置。
・ソフトの充実:接客サービスの向上。組織、指揮系統の再構築。
・成功への道:様々な分野の専門家のアドバイスを得る。欧州のクルーズフェリーに学ぶ。アジアのクルーズ船(コスタなど)に学ぶ。
・売り方の提案:マスメディアへの情報提供、説明会の開催。旅行会社への情報提供。
4.離島航路
(1)新造離島航路客船を見る

池田 良穂
(大阪府立大学)
・離島航路補助金交付要綱の改正
 @補助対象航路の拡大
 Aインセンティブ制度の導入
(2)高速船の波浪中運動評価について

片山 徹
(大阪府立大学)
乗り心地と船体運動
・高速船では波との出会い周期が短く、上下加速度が大きくなりがち
・周期6秒付近が酔い易い。6秒の波は波長56mで少し荒れた海で起き易い波。

揺れの予測プロセス
@航路での海気調査
A試験水槽での模型船を用いた運動および抵抗計測
B船上計測(船体運動、船速、波向き)
5.客船の安全性
(1)運動計測装置と波浪観測装置を用いた操船支援システムに関する研究

鈴木 一鷹
(大阪府立大学)
・遭遇する海象を正確に把握
 船舶用レーダーを用いて波浪状況を観測
・船舶の安全性能を正確に把握
 車両台数、乗客人数、積荷、喫水、トリム => KG、GM算出
・危険の判定と操船方法の提示
 例)左に舵を切ると同調横揺れが発生する。 速度を落とすとパラメトリック横揺れが発生する。



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