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テレビで映画「くちびるに歌を」(2015年公開)を観ました。五島列島の中学校の合唱部を指導する臨時音楽教員と生徒との物語です。
この映画は船の汽笛から始まります。五島列島の島の間を進むフェリーのデッキには、臨時音楽教員に就くために生まれ故郷の島に帰る新垣結衣さんが乗っています。
フェリーは五島旅客船の「フェリー・オーシャン」です。
この映画では「船の汽笛で、長い音2回は出発の合図」「前進! 前進!」と語られ、船の汽笛を「前に進め」「問題から逃げるな」の応援メッセージとして意味付けています。
船舶の汽笛の鳴らし方については海上衝突予防法で規定されていて、針路変更や追い越し等に関する汽笛については規定されていますが、出港時の汽笛に関する規定はありません。(Wikipedia 汽笛合図)
但し、規定された汽笛と誤認しない範囲で任意の汽笛を注意喚起信号として鳴らして良いとされているので、この映画の様に「長い音2回は出発の合図」としていても間違いではないかもしれません。
「短い音3回は出港の合図」という島も多いかもしれません。
カーフェリーではない小型の旅客船は、入港時には真っすぐ進んで桟橋に付け(入り船着)、出港時には後進で桟橋を離れることが多いです。船が後進する場合は「短音3回」を鳴らすことになっています(これは海上衝突予防法に則った鳴らし方です)。結果的に出港する時には、短い音を3回を鳴らすことになります。
練習帆船やクルーズ客船では「長い音(長音)3回」を出港時に鳴らすことが多いです。”ごき・げん・よ~”という意味だと教えられています。
YouTube:帆船日本丸の出港(4:05頃に汽笛が鳴ります)
この映画では「船の汽笛はドの音」というシーンも出て来ます。
船の汽笛の音にルールはあるのでしょうか? 調べてみると船舶設備規程に基づく「航海用具の基準を定める告示」に書かれていました。
告示によると、船の大きさにより汽笛の音程が異なり大型船の汽笛は低音、小型船は高音です。汽笛を聴くと、おおよそ船の大きさが判断できます。
複数の高さの音を同時に鳴らしている船も多いです。
船の全長 |
基本周波数 | 音圧 |
200m以上 |
70Hz~200Hz | 143dB以上 |
75m~200m | 130Hz~350Hz | 138dB以上 |
20m~75m | 250Hz~700Hz | 130dB以上 |
20m未満 | 250Hz~700Hz | 120dB以上(180Hz~450Hz) 115dB以上(450Hz~800Hz) 111dB以上(800Hz~2100Hz) |
映画のラストシーンは、新垣結衣さんが臨時音楽教員を終え、生徒達に見送られて島を離れるシーンです。ここでも長い汽笛が2回鳴ります。汽笛を聴いて新垣結衣さんが「ド シャープ」と呟きます。半音上がったみたいです。この物語により、生徒たちは一歩成長し、新垣結衣さん演じる臨時音楽教員は一歩踏み出したことを示しているものと思います。
映画に登場した「フェリー・オーシャン」は全長49.9mなので、汽笛の基本周波数は250Hz~700Hzです。音階で表すとド4(261.626Hz)からオクターブ上のファ5(698.456Hz)までが許容範囲です。
新垣結衣さんがラストシーンで聴いた汽笛は ド#4(C#4):277.183Hz。規定された周波数の範囲で、その中では低音側の音でした。
☆☆☆
最近の外国のクルーズ船の中には、汽笛で音階を出して曲を奏でる船が出てきました。カリブ海のプライベートアイランドで鳴らさすのは面白い趣向ですが、普通の港では止めてほしい。「ボォ~~~」、「ボォ~~~」が良いです。
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