日本クルーズ&フェリー学会講演会(2025)
(2025/11/8)

日本クルーズ&フェリー学会 総会・講演会
於 神戸海洋博物館

過去の「日本クルーズ&フェリー学会」の講演会概要


日本クルーズ&フェリー学会の総会と講演会が神戸港メリケンパークの神戸海洋博物館で開催されました。会場参加者は87名、オンライン参加者は8名でした。

■講演会       

講演内容(要約)
Session 1 2030年の日本人クルーズ人口100万人を目指して
「日本のクルーズ市場の持続的発展に向けた有識者検討会」報告書
~2030年の日本人のクルーズ人口100万人を目指して~
楠山賀英(国土交通省海事局 外航課課長補佐)
・観光人口に占めるクルーズ人口の割合は日本は0.03%で非常に少ない。アメリカは0.59%
・2029年には日本船籍船7隻+α、旅客定員は2019年の3倍(JOPAの試算)になる見込み
【有識者検討会】
・クルーズ市場は、我が国の観光にとってニューフロンティアであり、今後の観光立国への貢献が期待
・市場の間口・裾野を広げていくことが喫緊の課題
・クルーズを取扱う旅行会社が少ない。JATA加盟社の5%以下
・シニアの楽しみから脱却し、初心者や現役世代の参加を促すショートクルーズの増設が必要
新しいスタイルのクルーズが日本に登場~ディズニークルーズの計画~
志村直彦(オリエンタルランド クルーズ事業準備室長)
・クルーズ事業準備室を設置し60名体制で準備を進めている
・20年以上前からクルーズ事業の検討を開始し2023年から本格的に検討
・運航コンサルや運航管理(含む運航乗組員)は日本郵船と提携
・新造船はディズニーウイッシュと同型の14万トン
・ファミリー層、ヤングアダルト層を取り込む。インバンドの獲得も期待
・お台場の東京国際クルーズターミナル発着の2~3泊のクルーズ。西日本発着のクルーズも検討中
・2隻目の建造も目指したい
2隻体制に進化するプリンセスクルーズの日本発着クルーズ
鈴木宇夢(プリンセスクルーズ ポートオペレーション・ディレクター)
・2027年の日本発着クルーズを2隻体制で運航する
ダイヤモンドプリンセス(通年日本)、サファイヤプリンセス(日本&オーストラリア)
・将来は通年の2隻体制を目指す
・乗船客の国籍:日本50%、外国50%
・2隻体制はアメリカ&カナダからの需要増に対応するため
・2隻でコースを分け、多様な港に寄港。熊野大花火は2隻同時寄港
・7泊のショートクルーズを増やし、出発曜日の固定化を実施
・寄港地の商業施設などでメダリオン提示で特典利用可能。2025年7港⇒2028年40港(全港)目標
クルーズを中核とした海事クラスターの育成
~日本でのクルーズ客船建造再開を目指して~
池田良穂、片山徹(大阪公立大学)
【客船研究会の復活】
・目的:客船産業を中核とした新しい海事クラスターを国内に育てる
・対象船:クルーズ客船、大・中・小カーフェリー、高速旅客船
・参加者:造船、運航、規則、販売、学術、ユーザー
・第1回 2026/3/20 テーマ:世界の客船界の現状把握
【欧州におけるクルーズを中核とした海事クラスターの創生】
・世界のクルーズ船の約97%が欧州で建造
・欧州の新造船契約全体の87%がクルーズ船関連
・2024年のクルーズ船の受注総額は約570億ユーロ(約9兆円)
・海事技術産業は年間生産額1,280億ユーロ・雇用110万人。年間売上の約9%を研究開発に投資
・欧州企業が鋼板、船内設備、内装などあらゆる物を供給し、クルーズ船建造のバリューチェーン全体に関与
Session 2 フライ&クルーズを活用したクルーズ振興
フライ&クルーズの歴史とその役割
池田良穂(大阪府立大学 名誉教授)
・現代クルーズ成功の鍵の一つがフライ&クルーズ(飛行機とクルーズの連携)
・フライ&クルーズのメリット
乗客:クルーズ期間の短縮、荒れた海での単調な航海のカット
運航会社:定点定期の効率的な運航
港湾:効率的な港湾活用
旅行会社:仕入れの簡便さ、手離れの良さ
MSCベリッシマの那覇発着クルーズ
マッシモ ルッソ(MSCクルーズジャパン 副社長)
・従来は大都市中心の発着⇒那覇発着クルーズは新たな需要の可能性
・日本人の最適なショートクルーズの実施
・インバウンドに開かれたアクセス
・日本人7割、インバウンド3割
・若年層、女性客、学生グループ、家族連れの取り込み
・今後の展望:供給量30%増加(2024年比)、空港との連携拡大、エクスカーションの充実
神戸空港を利用したフライ&クルーズ
藤原大輔(関西エアポート神戸 神戸統括部長)
・神戸は港と空港が近い。ポートライナーで13分
・神戸空港利用客に対して手ぶら観光(乗船客の荷物を空港から港に運搬)の実証実験を実施したが利用者は僅かだった
・神戸空港を利用するクルーズ客はほとんど存在しない(ふなむし感想)
日本国内におけるフライ&クルーズのパイオニア
~飛んでクルーズシリーズ~
向井恒道(商船三井クルーズ 社長)
「飛んでクルーズ」北海道 2006年~
・累計乗船客数:25,000人、平均年齢65歳
・北海道道民が最多(30%)。その内の30%が飛行機を利用
「飛んでクルーズ」沖縄 2011年~
・累計乗船客数:13,000人、平均年齢65歳
・沖縄県民が最多
・食に力を入れた
・後継船でも飛んでシリーズを実施:台湾に寄港する6コース

・三井オーシャンフジの日本籍化を検討中
Session 3 クルーズの経済効果とオーバーツーリズム
インバウンド・クルーズ客による日本の地方活性化
林 雄介(国土交通省港湾局 クルーズ振興室/官民連携推進室)
・2024年の訪日クルーズ旅客数は、前年比約4.0 倍の143.8万人となり、コロナ前ピーク水準(2017年)の約57%まで回復。2025年は更に増加の見込み
・ラグジュアリー・エクスペディション船の寄港が増加し欧米からの観光客が増えている
・かつて訪日クルーズ旅客数の全体の8割を占めた中国発の訪日クルーズ旅客数(2024年)は44%(2017年比)しか戻っていない
・これまで外国人訪問が低い地域への寄港も増加し、クルーズの促進は地方誘客に大きく貢献できる
【2030年目標達成に向けたボトルネックと対応策】
・円滑で安全に旅客を受入可能とする港湾機能強化
クルーズ旅客の受入機能高度化に関するガイドラインを策定
・船社に選ばれる観光コンテンツや受入体制の充実
乗船客への寄港地レクチャーの実施、上質な観光ツアーの造成
乗船客を港周辺に留める努力、寄港地の二次交通機能の充実
【クルーズ船寄港の経済効果最大化】
・旅客の消費、船員の消費、船社の支出を定性、定量で測定・分析中
別府港におけるライドシェアによる二次交通確保の成功事例
池上明子(全国自治体ライドシェア連絡協議会 理事(事務局長))
・別府市公共ライドシェアの実車数の推移を分析すると実車数が増大する日とノルウェージャン・スピリットの寄港日が一致している事が分かった
・ライドシェアの行先から乗船客の動向が分析でき、観光対策をすべき問題点が見えてくる
・前港での乗船客に関する情報(傾向)は有用な情報。情報交換のための港間の連携が重要
・最適な二次交通を検討するために必要な情報
①乗客が使用している言語
②乗客の行動傾向(団体行動or個人行動)
③フリー客の人数
④下船オペレーション
⑤当該乗客の他港における二次交通利用状況(手段別人数・支払金額等)
・情報の活用
①地域の交通事業者へ伝達
②二次交通需要予測
③シャトルバス等の運行最適化(台数・運行時間等)
④言語対応可能なスタッフの配置や多言語看板
【クルーズ船二次交通の課題】
・限られたリソースの最適配分
・人材や観光資源の発掘・磨き上げ
Session 4 団体会員紹介
商船三井クルーズ 向井恒道
・2026/9に三井オーシャンサクラが就航
・日本船籍船として運航しデビュークルーズの船長、総料理長はにっぽん丸の経験者
MSCクルーズ 百武達也
・CLIAの情報では過去2年間の乗船客の31%は初めてクルーズに乗船した人で年々増加している。平均年齢は46.5歳
・首都圏発着だけではクルーズ人口は増えないので、大阪・神戸発着を増やしたい。インターポーティングも必要
パンスター/サンスター 萬田加奈子
・2025/4 パンスターミラクルが釜山~大阪に就航。全客室シャワー・トイレ付き
・フェリーの利便性でクルーズが体験できる船
・IMO認定のカテゴリ "Ro-Ro Cruise Passenger Ship"に該当する初めての船
・パンスターグレイス(元クイーンビートル)の運航を準備中
・釜山起点の遊覧クルーズを実施。日本から予約可能

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