日本クルーズ&フェリー学会講演会(2024)
(2024/11/9)

日本クルーズ&フェリー学会 総会・講演会
於 大阪公立大学難波サテライトI-site

過去の「日本クルーズ&フェリー学会」の講演会概要


日本クルーズ&フェリー学会の総会と講演会が大阪公立大学難波サテライトI-siteで開催されました。93名の参加者でした。

■講演会       

講演内容(要約)
Session 1 パネルディスカッション:クルーズ大阪湾&瀬戸内海
神戸港
瀬沢孝至(神戸市港湾局 振興課長)
(観光客への対応)
・乗船客の言語に対応できるガイドの手配。無料シャトルバス(ポートターミナル~元町)の運行
・公共交通機関(空港~都心~有馬温泉)へのタッチ決済導入、中国人客のほとんどのクレジットカードがタッチ決済に対応しておらず施策が生かせられなかった
(神戸発着のバイキングエデンクルーズ)
・神戸市民クルーズ枠を設定。台湾発フライ&クルーズ実現のため台湾の旅行会社に協力
大阪港
友田伸司(大阪港湾局 事業戦略担当部長)
(天保山客船ターミナル令和6年5月供用開始)
・22万トン級に対応して岸壁延長。旧ターミナルの2倍の床面積。スムーズなCIQ、クルーズの発着港を目指す
・天保山ターミナルは年間100日以上使用されている、人気の季節は入港を断る事が多発
(観光客への対応)
・個々のニーズ合わせた情報提供、観光から帰って来た乗船客へ天保山近辺のレンタサイクル情報を提供
和歌山県の各港
花田祥一(和歌山県 港湾空港局長)
(クルーズ船の寄港状況)
・外国船、小型船の寄港が増えている、県内でも和歌山下津港への寄港が増えた
(誘致活動)
・副知事、市町長によるトップセールスを実施。太平洋側5都県が連携した外国船誘致活動、近いけど互いに競合しない関係
(寄港地観光)
・文化財等を利用した特別な体験。夜のイベントはオーバーナイト寄港が期待できる
(今後の課題)
・お金を使いたくなる寄港観光への進化。クルーズの担当者が短期で入れ替わってしまう問題解決
四国各港のクルーズ受入状況
池町 円(四国地方整備局 港湾空港部長)
(2023年寄港状況)
・四国へのラグジュアリ船とエクスペディション船寄港が大幅に増、ラグジュアリ船は3.6倍、エクスペディション船は1.6倍(2019年比)
(外国船社へのアピール)
・岸壁が無くてもテンダーやゾディアックで上陸可能。四国4県合同の取組、RCIグループとの対談実施
・寄港地観光の発掘:海外での盆栽人気で外国船社幹部が盆栽園(高松市に集積)を視察
(オーバーツーリズム問題)
・常に観光客が溢れている訳ではない、時期の分散が必要
多くの港湾がクルーズ船の港湾使用料を免除している問題
(神戸)旅客サービスの継続のためには財源が必要、使用料免除は見直すべき
(大阪)大阪港でも免除を実施している
(和歌山)一律免除ではなく、条件を付けて免除したい
(四国)横浜や沖縄のように旅客受入設備関連使用料を乗船客から徴収して、オーバーツーリズムの対策に回したい
(司会)徴収した使用料は一般財源に入れずに旅客設備やオーバーツーリズム対策に使えるようにすべき
バスの運転手不足など、乗船客の輸送に関する問題
(神戸)片道新幹線、片道バスの寄港地観光を実施した。①バスを京都駅に回送して②バスとして使用した
ターミナル~(①バス)~新神戸駅~(新幹線)~京都駅~(京都市内観光)~京都駅~(②バス)~ターミナル
(大阪)バス、タクシー不足が発生していたが、タクシー会社がクルーズ船の入港情報を基に配車してくれている
(和歌山)バス会社直接ではなくバス協会に発注して必要なバスの台数を確保している
(四国)バス会社やタクシー会社に営業区域外での営業許可を臨時に取得してもらい、近隣の地区からもバスやタクシーを集めている
外国人対応が充分でなく満足度低下に繋がる懸念がある
魅力ある観光
(神戸)日本酒、神戸ビーフは欧米乗船客にヒットするコンテンツ、クルーズ船が入港すると市内のレストランが予約で満席になる
新神戸駅近くの竹中大工道具館見学は特別な体験として好評だった
(大阪)大阪市内から大阪府内に観光ポイントを広げるのが課題
(和歌山)行政が直接関わることができる土地柄のため、旅行会社ではできない地元と協力した観光コンテンツ造りができる
(四国)ガイドの養成が最重要、キラーコンテンツが無くても優秀なガイドが居ればどのコンテンツでも生かせられる
来年(2025年)に向けた抱負
(神戸)神戸から乗れる船を増やしたい。ラグジュアリ船の寄港が多くなったが、カジュアル船など層を広げたい
(大阪)日本の乗客に乗ってもらいたい。横浜に比べて少ない
(和歌山)地元にお金が落ちて、クルーズ船が寄港して良かったと思われるようにしないといけない
(四国)来年は大阪関西万博と瀬戸内国際芸術祭の開催が重なり、絶好のチャンスと期待している
Session 2 クルーズ業界の未来
飛鳥クルーズ 新造客船最新情報
小松崎有子(郵船クルーズ 執行役員 管理部長)
■飛鳥Ⅲはどんなクルーズ船?
(最幸の時間の創出)
・飛鳥Ⅱはクルーズ会社からの提案型のクルーズ、飛鳥Ⅲは多くの選択肢から乗船客が自由に選べるクルーズ
・飛鳥Ⅱと同様に日本人マーケットを主としたクルーズ
(6つのダイニング:その日の気分で、お好みのスタイルで)
・先ずはワインの選択から(フレンチ)、お好みの調理方法で(イタリアン)、こだわりの食器で(和食)、スパイスで楽しむ(グリル)
(エンターテイメント:新感覚の体験)
・LEDスクリーンと最先端技術を駆使した新感覚エンターテイメント。飛鳥Ⅱの様なプロダクションショーは無し
(珠玉のアート作品:感性を刺激する空間演出)
・人間国宝や大家の壁画やアート作品の展示。アート公募展の実施、応募1200点
Mitsui Ocean Fuji と Mitsui Ocean Cruisesが目指す世界
向井恒道(商船三井クルーズ 代表取締役社長)
(Mitsui Ocean Cruisesが目指す世界)
・「本物の日本」を感じられる美しい船旅を提供
・TOP5%のラグジュアリカテゴリーを目指す
・当面三井オーシャンフジとにっぽん丸の運航に集中し、新造船は1年以内に方針(含む造船所)を固める
(Mitsui Ocean Fuji)
・改装工事:日本人に合わせた高さ調整、トイレには温水シャワー付き便座を設置
・11/9~トライアル、12/1運航開始
・船内だけでなく寄港地観光でも日本の伝統を重視する
訪日クルーズ客船の現状
林 雄介(国土交通省港湾局 クルーズ振興室長)
(クルーズ船の訪日状況)
・2024年1600回、100~150万人が訪日の見込み。ラグジュアリ船、エクスペディション船が増加傾向
・外国クルーズ船が入港する港湾数も増加92港(2023年)
(クルーズ行政の取組)
・上質な寄港地観光の造成:体験型観光、地元エキスパートの同行と解説、「本物」と「特別」がキーワード、「高級」である必要はない
・クルーズ船社と寄港自治体との意見交換会実施:船会社が寄港地に求める物、寄港地からの提案とPR
・クルーズ船客受入のガイドライン作成:寄港パターン毎に必要な機能・施設を纏めた。一から検討・協議(従来)⇒ガイドラインをベースに協議
(オーバーツーリズム問題)
・60%の港湾で問題発生。港周辺に観光コンテンツを作って乗船客が港周辺に留まる時間を長くさせる
・輸送手段の強化:バス協会への発注、タクシーの営業範囲拡大、日本版ライドシェアの拡大
Session 3 客船の技術
LNG専燃エンジン+バッテリ+軸発兼推進電動機からなる環境対応型ハイブリッド推進システムの提案
池田賢治(川崎重工業 舶用推進システム総括部)
(船舶を取り巻く状況)
・船舶からの温室効果ガス規制が厳しくなっている。環境対応は今後更に加速する可能性がある
・エンジン単体の販売⇒エネルギーマネージメメントシステムの販売
(環境対応推進システムとは)
・船全体で省エネ化:主機・発電機運転の選択と集中、バッテリの活用
・冗長性のある1機1軸推進:機器レイアウトの自由度UP、推進効率の高い船型
・軸発兼推進電動機+バッテリ:主機の負荷変動抑制による効率化、出入港・停泊時のゼロエミッション
・自動制御による船員の業務量削減
自律運航への取組みと運転支援システム「ナビン」のご紹介
廣田一博(三菱造船 マリンエンジニアリングセンター 事業戦略推進室 電化デジタル化グループ長)
(スマートフェリーの開発目標)
・離岸、航行、物標感知・避航、着岸の操船自動化。機関室監視強化と陸上からの監視システム開発
(自動離着岸操船システム実証実験)
・予め設定した離着岸の計画経路に高精度で追従させる。複雑な操船の実現、障害物との安全距離を保つ
・船長の様な美しい経路での操船はできないが概ね期待した結果が得られた
(輻輳海域における自動避航操船実証実験)
・予定コースを通り、50分~60分先までの状況を予想しながら他船を避航する
・自船と他船との予想位置から最重要視すべき危険船をスイッチしながら避航
(自動運航のステータス分類)
・完全自動運転~人が係り(3段階のレベル)ながら自動運航~手動操船
・航海士がどこまで係るべき状況かをシステム側が判断・報告する
客船運航におけるAI技術の活用
橋本博公(大阪公立大学 海洋システム工学分野)
檜垣岳史(大阪公立大学 海洋システム工学分野)
(避航・離着桟の課題)
・避航:規則を遵守し他の船舶に危険を与えない避航アルゴリズムが必要
・離着桟:船体運動の高精度な予測、外乱に応じた航路計画と緻密な操船
(AIによる避航)
・避航は危険の認知から衝突判断、回避行動の決定までのプロセスが複雑。航海士の裁量範囲が大きい⇒答えが一意でない
・得られる報酬(メリット)を最大化する方策を学習させる
(模倣航路プランナーと追従コントローラーによる着桟航路計画作成の自動化)
・港湾ごと・個船ごとに手動で着桟航路を作成することは実用上現実的ではない
・模倣航路プランナー:実際の着桟航跡(AIS情報)を基にした航路計画作成
・追従コントローラー:強風などの外乱下でも計画航路を追従する制御
船舶用新燃料のライフサイクルアセスメント
中谷直樹(大阪公立大学 海洋システム工学分野)
補足:池田良穂(大阪公立大学 客員教授) 
(IMO温室効果ガス削減戦略)(2008年比)
・2030年までに30%削減を目指す(最低20%削減)、2040年までに80%削減を目指す(最低70%削減)
(ゼロエミッション船とは)
・新燃料(水素、アンモニア、メタノール、LNG等)を燃料とする船
(ゼロエミッション船の導入で温室効果ガス排出量は本当に減少(重油燃料に比べて)するのか?)
・原料生産⇒加工(液化など)⇒輸送⇒貯蔵⇒燃焼のトータルで判断する必要がある
・結論:液化の段階で大きなエネルギーを消費し温室効果ガス排出量は減少しない。液化に再生可能エネルギーを用いた電力を使えば効果がある
Session 4 総合討論
クルーズの販売
木島栄子(クルーズバケーション 会長)
・クルーズの会議なのにこの会の出席者が男性ばかりでガッカリ
・旅行業界、クルーズ販売の人材が少ないのが大きな問題点
・乗客がインターナショナルの方が日本人客も楽しめる。飛鳥も2~3割をインバウンド客にした方が良い
(クルーズ船による予約の違い)
・日本船:年齢は65~70才が多い、電話予約がメイン(通話時間は1人20分間)、リピート率が高い
・ディズニークルーズ:ハネムーナーが主体、WEB予約がメインで電話は10%以下、リピートはほぼ無い
クルーズの運航
小松崎有子(郵船クルーズ 執行役員 管理部長)
・60才台中心の利用者がそのままリピーターとして乗船し続けて貰えるようにして行きたい
・サービス要員を中心とした乗組員採用が最大のミッション、しかし陸上のホテルも人材不足の状況
・クルーズの仕事は広範囲に亘り面白い
クルーズの広報・周知
吉田絵里(海事プレス 雑誌クルーズ編集長)
・7代目の編集長。歴代編集長は4人は男性、3人は女性
・読者の趣向に合わせた情報を提供していく。女性は内装や船室のアメニティに関心がある、男性は知識欲が強い
・クルーズ船の選択肢が増えて提供すべき情報も増えている

クルーズ船の港湾使用料の減免内容

【神戸港】 神戸港の減免内容
入港から48時間について
(1)入港料:全額
(2)岸壁使用料:全額
(3)旅客乗降用渡橋使用料:全額
(4)船舶給水料のうち作業料を除いた部分:半額

ダイヤモンドプリンセスが6:00~翌18:00停泊の場合の減免額(概算)
給水量は2,000トンとした
(1)313千円+(2)2,769千円+(3)69千円+(4)(1,180/2)千円=合計3,741千円の減免

【大阪港】 大阪港の減免内容
(1)入港料:全額
(2)岸壁使用料:全額
(3)船客使用料:全額
(4)旅客乗降用渡橋使用料:全額
(5)船舶給水料:全額

【横浜港】 横浜港の減免内容
(横浜港を船籍港とする客船)
(1)入港料:全額
(2)岸壁使用料:全額
(3)自走式渡船橋使用料:全額

(市民クルーズを実施した時、出発時)
(1)入港料:全額
(2)岸壁使用料:24時間まで全額、これを超える時間は50%相当額
(3)自走式渡船橋使用料:24時間まで全額

(市民クルーズを実施した時、帰港時)
(1)入港料:全額
(2)岸壁使用料:12時間まで全額、これを超える時間は50%相当額
(3)自走式渡船橋使用料:12時間まで全額

(着岸中に船内見学会を実施した時)
(1)入港料:全額
(2)岸壁使用料:24時間まで全額、これを超える時間は50%相当額
(3)自走式渡船橋使用料:24時間まで全額


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