ふなむしのページ
神戸モダン建築祭 公開建築物 |
神戸モダン建築祭は、港町神戸にあるモダン建築を日時限定で特別公開するイベントです。通常立ち入られない建物を見学することができます。このイベントには「次の世代を担う若者やこどもたちが、こうした建築を守りたいと思ってくれるように」の想いが込められています。
モダン建築祭パスポート(WEB決済の場合2000円)購入で各建物に入館・見学できます。さらにオーナーや管理者、建築や各分野の専門家の説明を聴きながら見学する特別ツアー(有料)がありました。
建築探偵 円満字さんのガイドで神戸港第4突堤Q2上屋、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)、神戸税関を巡る特別ツアー(4000円)に参加しました。
※これらの建物は特別ツアーに参加しなくてもモダン建築祭パスポートだけで自由に見学できます
※特別ツアーへの参加はモダン建築祭パスポートの所持が必要です
第4突堤Q2上屋は1932年に建設されました。外国航路の客船ターミナルと鉄道駅を兼ねた建物です。
手前がQ2上屋 奥が延伸されたQ1ポートターミナル |
昭和初期の第4突堤は現在のQ2部分のみで、Q1部分がポートアイランドの埋め立てに合わせて延伸され1970年にポートターミナルが建設されました。
※「Q2」は岸壁を示す記号です。神戸港新港突堤は第1突堤のAから順番に付けられています。第4突堤にはO,P,Q,Rの各岸壁がありますがQ岸壁とO岸壁は延伸されて長くなったのでQ1とQ2(O1とO2)に分かれています。
Q2上屋 |
Q2上屋の3階には宿直室があります。宿直室には当時の流し台が残っています。釜戸は薪を燃やしていました。
3階の宿直室 | 昭和初期の流し台 |
3階と2階を繋ぐ階段には、装飾性を考えた丸窓があります。床のタイルは厚みのあるタイルを使用し目地がほとんどない織物の様に見えるタイル床です。
装飾を意識した丸窓 | 織物の様に見えるタイル床 |
2階には送迎デッキがあります。屋根を支える曲線の桟が連なって綺麗です。2階に待合室があって一番南側に貴賓室がありました。
2階の送迎デッキ |
2階と1階を繋ぐ階段 |
1階にホールがあります。ホールの左右に2箇所ある受付の窓口は釉薬掛けの布目タイルが張られた装飾がされています。
1階ホール |
1階には嘗て鉄道のプラットフォームがあり、京都行の「ボートトレイン」と呼ばれる特急列車が発車していました。
鉄道駅のプラットフォーム | アールデコ調の玄関扉 |
1階には貨物倉庫があり現在も民間業者が使用しています。
貨物倉庫 | ロッカー? |
KIITOはアート系のイベントを開催したり賃貸オフィスとして使われています。
KIITOは異なる時期に建てられた2つの建物から構成されています。西側にあるのが神戸で活躍した清水英二が設計し1927年に建築された神戸市立生糸検査所。南側に面して建つのが兵庫県下で活躍した置塩章が設計し1932年に建築された国立生糸検査所です。置塩章は「関西の鉄筋コンクリートの父」とも呼ばれる建築家です。
KIITOの全容 手前は神戸市立生糸検査所 奥は国立生糸検査所 |
(左)神戸市立生糸検査所 (右)国立生糸検査所 |
後から建てられた国立生糸検査所は先に建てられた神戸市立生糸検査所のデザインに合わせたデザインになっています。
神戸市立生糸検査所 | 国立生糸検査所 |
神戸市立生糸検査所の外壁のあちこちにテラコッタの装飾が付けられています。円満字さん推測ではこのテラコッタの一番下の丸いのは「蚕の繭」、真ん中の丸まっているのは「糸の束」、一番上は「桑の葉」。
ゴシック様式の玄関は石を削って筋を付けて造られています。
ゴシック様式の玄関 | テラコッタの装飾 |
神戸市立生糸検査所に入ると対になった階段があります。親柱は大理石でできています。向かって右側の手摺も大理石ですが、左側は修復されたためか大理石の砕石とセメントを混ぜた研ぎ出しになっています。天井は縦と横のアーチが重ねられた三次元立体のアーチで造られています。
玄関ホール |
建築当時の床のフロアタイルが一部分だけ残っています。
建築当時のフロアタイル |
国立生糸検査所の北側通用口の床にはベージュと緑色の布目タイルが市松模様に貼られています。手摺にはアールデモ模様の格子が付けられています。
天井の電灯の取付け部分に装飾が付いていて陰影が出て綺麗です。
布目タイルの床 アールデモ模様の格子が嵌められた手摺 |
国立生糸検査所 北側通用口の前 |
中央にある大ホールは嘗て生糸の検査をしていた場所です。1階のカフェは生糸検査所時代に使われていた趣あるテーブルや検査機器を再利用したテーブルが使用されています。
大ホール | KIITOカフェ |
KIITOの南側には昭和初期に建てられた三井、三菱、住友の倉庫が並んでいて今も使われています。神戸港の西側から再開発が進んでいて取り壊される恐れがあります。神戸モダン建築祭の開催はこれらの倉庫群の様な歴史ある建物を取り壊すことなく今後も再利用することを応援する目的があります。
岸壁沿いに並ぶ倉庫群 |
1927年に建てられた旧本関庁舎と1998年に増築された新館から構成されています。新館建設のために取り壊した旧別館の外壁を再構築することにより、旧本関庁舎の花崗岩張りの時計塔を含めた外観と内部ホール等はほぼ完全な形で保全されています。
旧本関庁舎 | 神戸商工貿易センタービルから見た 神戸税関全体像 |
玄関を入ると四層吹き抜けの玄関ホールがあります。
玄関ホール下から |
柱が8本で床に8つの輪がモザイクタイルで描かれています。
3階から | 2階から |
「拉麺模様」はギリシア様式の模様です。
2階 |
2階には嘗て貴賓室として使用されていた部屋があります。扉には象嵌細工の装飾があります。
貴賓室 | 貴賓室の扉 |
特別ツアーの特典として時計塔の上まで登ることができました。柱が8本、時計は3個という割り切れない配置です。
時計塔の上 | 円形の所に時計が設置されている |
現在の中庭には嘗ては屋根があり事務所として使われていました。
中庭から新館を見る | 中庭から時計塔を見る |
新館は9階建てのビルです。
新館ロビー | 新館ロビーから中庭を見る |
新館の屋上に立ち入ることができました。
新館屋上 | 新館9階 |
新館屋上からは神戸港が一望できます。
旧本関庁舎 |
夕暮れの旧本関庁舎 | 夕暮れの海側 |
特別ツアーの終了時には閉館時刻になり一般見学者の姿が無くなりました。
人影が無くなった旧本関庁舎ロビー |
特別ツアーに参加しなくてもモダン建築祭パスポートのみで自由に見学できる建物も多くあります。神戸モダン建築祭のアプリでは地図で各建物の場所が分かり、音声ガイドによる解説が聞けるので便利です。さらに建物によっては現地ガイドの方が待機していて説明を聴くことができました。
以下に記す各建物の説明は主に音声ガイドを要約したものです。
建築家ハンセルが自邸として1896年に建てました。2階中央にベランダが配されたコロニアム様式の建物ですがそこに白い下見板張りがあります。
ヨーロッパから東南アジア経由で伝わったコロニアム様式とアメリカから北海道経由で伝わった下見板張りが融合した建物で、ヨーロッパにもアメリカにもない神戸独特のスタイルを持つ建物です。
建築家安藤忠雄の設計により1977年建てられた商業施設です。 安藤忠雄さんの得意とする打ちはなしコンクリートではなく、北野の街にマッチしたレンガの壁です。
長方形の中庭がありますが階段が斜めに取り付けられていて、三角形の中庭のように感じさせられます。
中庭 |
建築家安藤忠雄の初期の名作です。ほぼ同じ形の2つの塔を少し斜めにずらして配置しその間に環状の廊下を通した迷路の様な空間構成です。
130年以上の歴史を持つ建物ですが、2022年からコーワーキングスペース/撮影スタジオ/カフェとして使われています。「メディウム」は「媒体」の意味です。
貿易商大林家の邸宅として1907年に和館部分が建てられ、1928年に洋館部分が増築されました。現在料亭松迺家の店舗として使われています。
ドイツ人実業家ゲンセン邸として1909年に建てられました。コロニアム様式の建物で白い下見板張りを持つ神戸独特の様式の洋館です。
ベランダの床に傾斜があります。建築当初はベランダにはガラスは無く吹き込んだ雨水を排出するための傾斜です。暑い東南アジアから伝わったコロニアム様式のベランダが、少し寒い神戸の気候に合わせて室内化されたものです。
洋画家小磯良平の邸宅の敷地を譲り受けて1952年建てられました。ゴシック様式の尖塔アーチを持ちながら装飾が省略され白壁が明るいスパニッシュ風です。
震災で全壊した元の教会を2004年に建て替えた教会です。
大礼拝堂 | 後方にはパイプオルガン |
1963年に建てられ鼓型のタワーです。
現在大規模改修工事中でヘルメットを被って内部に入りました(撮影禁止)。工事の主目的は耐震工事で2024年春にリニューアルオープンする予定です。図面と実物には寸法の違いがあったらしいです(ふなむし)
アメリカの建築家フランク・ゲイリーの設計で1987年に建てられました。魚のオブジェは鯉で、嘗てここに鯉川の河口があったことに由来しています。現在鯉川は暗渠になっていてその上に道路(鯉川筋)が走っています。
川崎汽船の本社ビルとして1939年に建てられました。アール・デコの傑作建築と言われています。
嘗ては地下食堂の天井のガラスから外光が降り注いでいました。
地下食堂 |
地下食堂 |
1949年に帽子の製造・関連素材の輸出入と保税上屋として建てられました。1972年にロフト付の貸事務所に改修され、現在は音楽ホールやスタジオ、映画やドラマのロケ地として使用されています。
映画「アウトレイジ」で使用された部屋 |
フィットネスジム |
1930年にオフィスビルとして建てられました。
外壁は当時流行したスクラッチタイルで覆われています。「スクラッチ」は「引っ掻く」の意味で、釘が沢山付いた道具で引っ掻いて一品一品手作りで作られています。
スクラッチタイルの外壁 |
階段には大理石が使われています。
扉の欄間には幾何学模様のステンドグラスが彩っています。
建築家安藤忠雄たちの寄付により2022年に建築された図書館です。
神戸開港100年を記念して1969年建設されました。霞が関ビルに続く日本で2棟目の超高層ビルです。
最上階の会議室から素晴らしい眺望が見られます。