日本クルーズ&フェリー学会講演会(2022)
(2022/11/12)



過去の「日本クルーズ&フェリー学会」の講演会概要


日本クルーズ&フェリー学会の総会と講演会が大阪公立大学 難波サテライトI-Siteで開催されました。3年振りの開催でTV会議でも配信されました。

■講演会       

講演内容(要約)
コロナ後のクルーズ受け入れ港湾の動き(ハード、ソフト)と、受け入れガイドラインの動向
池町 円(国土交通省 港湾局港湾課クルーズ振興室室長)
・2021/6以降、欧州やアメリカではクルーズの運航再開が活発化している。CLIAは2023年にはコロナ前の水準に戻ると予想
・北東アジアは再開が遅れていたが、韓国、台湾が10月から国際クルーズの受入を再開
・日本の自治体からは国際クルーズ再開の要望が多い
・船内で感染者が出た場合の仮検疫証取消し問題など国際クルーズ再開のためには解決すべき課題がある
・日本国際クルーズ協議会(JICC:外国船クルーズに関わる業界団体)が外国船の国際クルーズ用のガイドラインを作成
 このガイドラインに沿って外国船の国際クルーズも再開される見込み
ポスト新型コロナ禍における外航クルーズの現状と、ロイヤル・カリビアングループの紹介
百武 達也(ロイヤル・カリビアン・インターナショナル)
◆外航クルーズの現状
・2020/12 クアンタムオブザシーズのクルーズ再開。乗船日当日PCR検査、無寄港、レストラン座席固定
・2021年 乗船前48時間以内のPCR検査、ワクチン接種、提供サービスの区別、発着地・寄港地のガイドライン遵守
・2022年 船社ごとに決めた安全対策でクルーズ実施可能
・コロナ対策は当たり前となり、営業トークで説明する機会はなくなった
・コスタの2023年北東アジア配船中止やぱしふぃっくびいなすの撤退はレアケース。世界のクルーズは今後も伸びる
◆RCI新時代への挑戦
・リッツに続き世界ブランドのホテルがクルーズに参入
・船上MICEは陸上よりコスト削減が図れ、予約は好調
※MICE:会議(meeting),研修・報奨旅行(incentive travel),国際会議(convention),イベントや展示会(event,exhibition)
・これからのクルーズ船は個性を出し、従来のカテゴリー(カジュアル、プレミアム、ラグジュアリー)では区別できなくなる
・子供向け動画を配信したら、ウエブサイト訪問者が増えた。世代を超えた家族旅行の提供
・オンラインチェックインなどをお客様にお願いして生産性を上げ、その分RCIはサービスレーベルを上げる。
ポストコロナ禍の邦船クルーズーにっぽん丸の現場からー
川野 惠一郎(商船三井客船 取締役・ゼネラルマネージャー)
◆2020/10 にっぽん丸の運航再開
・日本外航客船協会(JOPA)、日本港湾協会のガイドラインに沿って感染症予防対策マネジメントマニュアルを策定し、日本海事協会の認証を得た
・事前と乗船直前の検査、QRコードによる船内動静確認、空調機の抗菌フィルター取付、乗組員の教育・訓練の徹底など
◆2022/12 外国クルーズ再開(12/15発モーリシャスプレシャスクルーズ)
・日本外航客船協会ガイドライン(第8版)に沿ったマニュアルを策定
・過去7日間の総感染者の割合を基にした新運航基準の策定
「紅」から「くれない」へ。明治45年から続く悠久の物語
森 慶太(フェリーさんふらわあ 旅客営業部CSグループ係長)
◆日本初のLNG燃料フェリー「さんふらわあくれない」就航
・カジュアルクルーズの需要がある。フェリーを利用したクルーズの提供
・町興しのプロデューサー
◆2つのテーマ「きずな」と「復活」
・世代を超えて家族が船に集い、船旅を楽しむといった家族のつながり=きずな(KIZUNA)を再認識する場を提供
 長距離フェリー初となる「コネクティングルーム」の設置
・別府航路で歴史ある「くれない」「むらさき」の名前がカジュアルクルーズ船として復活
◆新造船の特徴
・環境にやさしいLNG燃料
・快適性重視:定員一人当たりの面積6.9㎡→10.9㎡、大浴場2倍、レストラン席数1.5倍、静粛性向上
・客室:コネクティングルーム、スイート、ウィズペットルームの設置
・内装:さつま・きりしま建造やにっぽん丸改装を担当した渡辺友之氏を起用
・パブリックスペース:3層吹き抜けのアトリウム、プロジェクションマッピングによるエンターテイメント性の追及
国内フェリーの環境対策(実績技術から将来展望まで)
森 哲也(三菱造船 造船設計部次長)
◆フェリー業界の社会的変遷
・1990年代:高速フェリーが活躍(スピード重視) 国内景気の活況、トラック・鉄道との輸送時間格差短縮
・2000年代:高速化から低燃費化への以降 リーマンショック、燃料油価格の高騰
・2010年代:地球環境負荷低減化への移行 国内景気低迷、NOx/SOx排出規制
・2020年以降:カーボンニュートラルに向けた取り組み
◆地球環境保護のための国策
・燃料消費量低減(CO2排出低減),大気汚染防止(NOx,SOx排出規制),地球温暖化防止(GHG削減)
◆フェリーに対するニーズ
・相反するニーズ(大型化、省エネ化、安全性、環境性)のバランス化
◆脱炭素技術の開発動向
・LNG燃料供給装置+LNG燃料ORC発電:LNGガス気化時の冷熱を利用して発電
・アンモニア燃料対応:CO2フリーのアンモニアを船舶燃料として使用。安全対策と匂い対策
・船上CO2回収装置:航行中に排出されるCO2を削減
・アンモニア・水素はエネルギー密度が小さいのでタンクが大型になり貨物スペースが狭くなる問題点がある
総合討論(参加者の意見)
・長距離フェリーだけでなくもっと短い距離のフェリーが運航できるよう港の整備が必要
・船の上で仕事しつつ、寄港地で観光できるクルーズに乗船したい
・フェリーさんふらわあでにっぽん丸と同じ食事が食べられるサービスを提供してほしい

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