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新きたかみ 乗船記
(2019/1/29~1/31)

きたかみ(太平洋フェリー) in 仙台
総トン数13,694トン、全長192.5m、全幅27m

1/21 新きたかみ 名古屋初入港
1/29~1/31 新きたかみ 乗船記
2/10 新きたかみ 見学会


1/25に就航した新「きたかみ」の名古屋~苫小牧に乗船しました。「きたかみ」は仙台~苫小牧航路専用に就航しますが、「きそ」がドック入りのこのタイミングは名古屋発の航海が3航海あります。来年以降もこの季節には、名古屋港に寄港するものと思います。

昨年、僚船の3代目「いしかり」が2017年度のフェリー・オブ・ザ・イヤー(雑誌クルーズ)に選ばれました。1992年の2代目「いしかり」以降、2代目「きそ」、3代目「いしかり」まで太平洋フェリーが26年連続で受賞したことになります。新「きたかみ」にもその期待が掛かりましたが、計画段階で公開された情報は、これまでの豪華船路線を大きく変更する内容で驚きました。

他社がパブリックスペースの拡大や船内設備・イベントの充実を図る中、「これまでの当社船のイメージである豪華さから少し離れた、船旅に慣れたお客さまの使いやすさを重視した」(太平洋フェリー志甫社長)という寂しいコメントが出ていました。

「きたかみ」の旅客定員は535名で、「いしかり」の777名から大幅減です。「きたかみ」からは大部屋がなくなり、最低でも寝台以上になりました。「きたかみ」最廉価のC寝台は「いしかり」の2等和室(大部屋)と同じ料金です。但し、「いしかり」の2等和室は定員の1割にも満たないので、大部屋廃止はこれまでの延長線上の事です。一方、「きたかみ」からはスイート船室(4室->0室)がなくなり、特等(63室->10室)、1等(80室->48室)の船室の数が大幅に減少しました。こちらの方が特筆すべきことと思います。

◆◆ きたかみ の航路 ◆◆

■名古屋出港

太平洋フェリーが出港する名古屋港フェリーターミナルへは、名古屋駅からの直行バスが便利です。名鉄バスセンターから出港時間に合わせて運転されています。(所要40分 550円)

太平洋フェリーはインターネット予約でも、窓口で乗船手続きが必要です。3つの窓口が開いていましたが、いずれも時間の掛かるお客さんだったようで、列がピタリと止まって長い時間待たされました。最近はインターネットでコピーしたチケットでそのまま乗船できたり、ターミナルのチェックイン機で発券できたりと、窓口での手続きの省略が進んでいますが、太平洋フェリーはそこまで進んでいません。

乗船のためには、途中に階段がある長い人道橋を通って行きます。高齢者や身体が不自由な方には辛い道のりです。ここもバリアフリーにすべきですが、港の施設については船会社側で何ともできない事があるようです。船会社によっては事前予約により、送迎用の自動車でランプウェアから乗船して、船内のエレベーターで客室へ上がれるサービスもありますが、太平洋フェリーのHPにはそのようなサービスは掲示されていません。

出港シーンをデッキから見るため、乗船して直ぐにレストランに行きましたが、ここでも長蛇の列。20分くらい並んでようやく料理の列に辿り着きました。新造船のクルーズを組み込んだツアーでしょうか団体のお客さんが何組かあったので、レストランの利用率が高かったようです。

名古屋港では「きたかみ」のレストランは他船より30分遅くオープンします。料理の列が1列しかなく料理を取るにも時間が掛かるので、他船と同じオープン時間にすべきと思います。

急いで夕食を掻き込みましたが、レストランの窓から岸壁が離れて行くのが見えたので、食べ残したアイスクリームをポケットに入れてデッキに出ました。

タグボートの支援を得て回頭

「きたかみ」は名古屋港では入船で着岸します。バウバイザーが無くなったので、車両の乗下船は左舷船尾のサイドランプのみで行います。

タグボートの支援を得て、離岸、回頭し、名港西大橋に向かいます。

名港西大橋

名港西大橋、金城水域、金城交差路、東航路を通って伊勢湾に出ました。

■伊良湖水道

「きたかみ」はショーラウンジが廃止されて、ラウンジショーは通常実施されません(不定期で実施)。就航直後の航海ではピアノの演奏があったようですが、今航海から当分の間予定がありません。ラウンジショーがないと時間を持て余します。「きたかみ」はパブリックスペースが狭いので、船内巡りも直ぐに終わってしまいました。

21時15分頃に伊良湖水道を通過しました。

神島(伊良湖水道)

船上で出会った雑誌の記者さんとしばらく談笑した後、船室に戻りました。

■日の出

深夜には強いピッチングがありましたが、日の出頃は穏やかでした。日の出は6時45分頃でした。

揺れはありますが、エンジンの振動は感じません。船室やパブリックスペースでは軋み音も無く、快適です。

船上から見る日の出

「きたかみ」にはペットと泊まれる部屋2室、ペットハウス、ペットテラスがありますが、今航海ではペットを見かけませんでした。

ペットテラス

■仙台入港

仙台入港は16時20分頃で、予定時刻より20分早着です。

SHINLINE 12(マレーシア) ふじき(フジトランス)

仙台港は入船で着岸で、車両の乗下船は右舷船首、右舷船尾のサイドランプを使用して行います。

苫小牧までの船客は、仙台港で一時下船できます。今回20分早着したので、上陸可能時間は2時間50分でした(16:20~19:10)。一時下船のためには、船内で事前申請が必要です。下船客が時間までに船に戻らなかった場合や、地震(津波)発生時には、船客を待たずに出港することへの同意書にサインします。


夕日に照らされピンク色に光る「きたかみ」

仙台港では、「きたかみ」のレストランは他船より15分遅くオープンします。レストランのオープンと同時にレストランに行きましたが、この日の夕食は並んでいる人は少なく、直ぐに食べられました。団体客が仙台で下船して利用客が少なくなった様です。

この日はゆっくり食事を取っても、出港時間にデッキに出られました。

仙台港出港 タグボートが就きました

■津軽海峡

昨夜は、その前夜より揺れが大きかった様に感じましたが、「きたかみ」は順調に走っています。

朝食は窓際の席で食べました。窓の外は冬の海です。舞い散る雪は、船首から船尾方向に斜めに上がって行きます。時折ドーンという音が聞こえると、時間差で波しぶきが窓外を通り過ぎます。

景色が何も見えなくなったり、急に視界が開けて岬が見えたり、が頻繁に繰り返す天候です。

津軽海峡の入口で朝食

■まもなく苫小牧

苫小牧から八戸へ向かう「シルバーエイト」と行き会いました。

シルバーエイト(シルバーフェリー)

■苫小牧入港

苫小牧は寒いけど、晴れていて、風は穏やかです。


岸壁の前で180度回頭して出船で着岸します。車両の乗下船は右舷船首のサイドランプと船尾のランプを使用して行います。

定刻より10分早い10時50分頃着岸しました。直ぐに下船できました。着岸から下船までの時間が短いのでイライラしません。個室のカードキーは返却します。

苫小牧西港フェリーターミナル

下船後、バスで新千歳空港へ向かい、飛行機で名古屋に戻りました。新千歳空港までバスで40分 670円です。

新千歳空港行きのバスは意外に利用者がありました。まさか私の様に直ぐに北海道を離れる人ばかりとは思われません。家族連れもいます。

ネットで調べてみると、例えば11時30分に苫小牧西港から小樽へ行く場合、苫小牧駅までバスで行ってJR(特急を利用)に乗り換えるより、空港までバスで行ってJR(快速利用)に乗り換える方が早く着きます。料金は苫小牧駅経由(特急を利用しない場合)が40円安いですが、JRの運転本数を考慮すると空港で乗り換える方が得策の様です。

※苫小牧西港~新千歳空港のバスは、2019/3/31をもって運行休止となることが発表されました。


◆◆ きたかみ の船内 ◆◆

船内案内図(拡大)

■デッキ6
◆エントランス

「きたかみ」のエントランスはデッキ6です。「きそ」や「いしかり」の華やかな吹き抜けの空間はなく、シースルーエレベーターもありません。エントランスの真ん中にはテレビコーナーがあって、その右舷側にはインフォメーションと売店、左舷側には展望大浴場があります。

エントランス

インフォメーション テレビコーナー

◆KIDS CABIN

デッキ7へ上がる中央階段の下には、子供用の「KIDS CABIN」があります。KIDS CABINは「きたかみ」で最も目立つ存在です。中で遊ぶ子供の動きを捉えて、プロジェクションマッピングで表示される映像が変化する仕掛けです。エアーホッケーなどのゲームもできます。

◆展望大浴場、シャワールーム

大浴場は入港30分前まで利用できます。シャワールームも設置されています。

展望大浴場

シャワールーム

◆ロッカー室

ロッカー室には冷蔵保管できるものがあります(200円)。通常のロッカーはコイン返却式で無料です。

手前の白いロッカーは冷蔵式

■デッキ7
◆中央階段

デッキ6とデッキ7を結ぶ中央階段の天井にはプロジェクションマッピングで映像が表示されます。ストーリー性はない宇宙をイメージした映像です。映写時間のアナウンスは無く、周囲の照明が落とされることもありません。静かに始まって、静かに終わります。

中央階段
プロジェクションマッピング

階段周囲のカウンター

◆パブリックスペース

パブリックスペースの角にピアノが設置されています。不定期のラウンジショーはここで実施されるものと思います。折角ピアノの設置するのであらば、自動ピアノにして無人でも演奏すれば良いと思うのですが、音は奏でていませんでした。このピアノの稼働率はどれくらいになるのでしょうか。

ピアノ パブリックスペース

◆プロムナード

窓にはカーテンが無く、太平洋フェリーお得意のオブジェの類もありません。飾り気が無くただ白いだけの壁には、プロジェクションマッピングが投影されています。宇宙の映像や幾何学模様のイメージです。
壁に貼られた星々のパネルを明るい昼間に見ると、何故ここに掲示されているのか違和感があります。「きたかみ」は通常、仙台~苫小牧だけを走るので、問題ないのかもしれません。

「生活路線として年に複数回利用する人が多い。船旅に慣れているからこそ使いやすさを求めた」(太平洋フェリー志甫社長)というコメントがありますが、プロジェクションマッピングは、最初は物珍しさから興味を惹いても、何度も乗船するお客さんには直ぐに飽きられそうです。

プロムナードのプロジェクションマッピング

■船室(1等クロスツイン)

利用したのは1等クロスツインの船室です。2名定員ですが、繁忙期以外は貸し切り料金不要で1名でも利用できます。
(訂正)1等クロスツインは1~2定員のため、期間に関係なく追加料金不要で1名で貸切利用できます。

船室前の通路は、照明、壁、床ともに装飾がなく、「いしかり」と比べると殺風景です。船室のキーは、IC式のカードキーになって便利になりました。

1等クロスツインの船室は土足厳禁です。しかし、靴を脱ぐスペース(玄関三和土)が狭く、身体を捩じりながら扉を開け閉めする必要があります。おまけに、玄関三和土と居室の間に段差が無いので、誤って土足で入ってしまいそうです。

船室前の通路 狭過ぎる玄関三和土

狭いスペースに2つのベットをクロスする方向に配置しています。階段の下に荷物置き場があったり、椅子が収納されていたりして、スペースを上手く使っています。救命胴衣は上段のベッドの下に収納されています。窓際のベッドは寒いかもと不安でしたが、壁が厚くて問題ありませんでした。それでも、2夜とも上段ベッドを使いました。

各ベッドの頭の位置には照度調整ができる照明とコンセントがあります。布団は羽毛布団です。

エアコンは、温度、風量、風向が小まめに調整できるタイプです。船内放送の音量も切替可能です。部屋の照明もダイヤル式に照度を変えられ便利です。

「きたかみ」のシャワーは、お湯の水圧が高くて気持ち良いです。「きたかみ」の便座が温水シャワー付きになりました。「いしかり」(一等)がそうでないのが不思議なくらい。

タオルは大小それぞれ2人分用意されているので1人の場合は不足ありませんが、名古屋~苫小牧を2名で使用する場合は、仙台で交換してほしいです。供用場所にストックしておいて”各自持って行ってください”でも良いと思う。

ナイトウェアもありますが、朝起きるとはだけています。上下別で下はパンツ式だと嬉しい。

バスルーム

アウトサイドで窓があるので昼間は明るいです。左舷側の船室だったので窓際に行くと、名古屋~苫小牧までのほとんどの海域でインターネットが接続できました。しかし、同じ2名定員の「いしかり」1等インサイドに比べて狭いのが欠点です。料金は、「いしかり」の1等インサイドに比べて少し高いです。名古屋~苫小牧(A期間)「きたかみ」1等クロスツイン 19,100円、「いしかり」1等インサイド 18,000円

もし同じ船で2つの船室が選べるのなら、私は居住性を優先して1等インサイドを選ぶと思います。また今回の船室は6デッキでしたが、7デッキの方が天井が高いので、7デッキの船室の方が快適と思われます。※2/10の見学会の際に比べてみたら、デッキの高さの違いに拘わらず、船室の天井は同じ高さの様に感じました。

■レストラン(グリーンプラネット)

「きたかみ」のレストランは「グリーンプラネット」のみで全食バイキングです。「いしかり」のヨットクラブのように軽食を提供する場所はありません。旧「きたかみ」は他船に比べて料金が低く設定されていましたが、新「きたかみ」は「いしかり」「きそ」と同じ料金です。夕食2000円、朝食・昼食1000円。

レストランのオープン時間は他船より15分~30分遅く設定されています。クローズ時間は同じなので営業時間が短くなっています。1日目の夜は利用者が多く、しかも料理のレーンは1列のみなので、20分位待たされました。

入口 グリーンプラネット

「きたかみ」のテーブルからはテーブルクロスがなくなりました。壁は白一色、カーテンまで白なので、華やかさがありません。”樹木をイメージした柱からは木漏れ日のような光が降り注ぎます”の感覚は持てませんでした。

カウンターテーブルが多くて、一人旅の人にとっては席が探し得やすい配置です。左舷窓際の区画は中央のエリアと分離して、レストラン営業時間外はプロムナードとして利用できそうな配置ですが、今航海ではそのような運用はしていませんでした。

カウンターテーブル 左舷窓側の区画

料理そのものは2年前に乗船した「いしかり」から大きな変化が無いように感じましたが、サラダーバーの野菜の種類やデザート類が減ったように感じます。

太平洋フェリー名物のステーキ、TV「ガイヤの夜明け」で紹介された大アサリのオーブン焼き、ブリの照り焼きは、2日間ともに夕食に出ましたが、それ以外のメニューは日替わりだったように思います。

◆1日目夕食

ステーキ 大アサリのオーブン焼き、ブリの照り焼き

ごぼうかき揚げ、串なし焼き鳥 豚すき鍋

◆2日目朝食

朝食と昼食のサラダバーは夕食のサラダバーよりさらに寂しい品ぞろえでした。

コーヒーとワッフル

◆2日目夕食

2日目の夕食は利用者少なく、ゆっくり食事がとれました。

ステーキ 大アサリのオーブン焼き、ブリの照り焼き

骨付きソーセージ、肉じゃが テリーヌ、豚キムチ鍋

サラダバー 甘味コーナー

サラダバーの近辺のスペースが特に狭く、ドレッシングの置き場所すらなく料理と一緒に置かれています。同時に複数の人が取れないので使い難いです。

フルーツとデザート

■まとめ

見学会に参加した人の意見や乗船した人の意見を見ると、ラウンジやラウンジショーが無くなってクルーズ色が消えたことに対する批判的な意見や、仙台~苫小牧航路の性格から考慮すると現実的で妥当な進歩との肯定的な意見など様々です。

私はラウンジの廃止については止む無しとは思いますが、実際に乗船してみてパブリックスペースやレストランの内装の貧弱さにガッカリしました。”宇宙をイメージした”というのは聞こえは良いですが、結局”宇宙船は機能的ではあるが、狭くて、飾り気が無い空間だった”というのが正直な感想です。"宇宙”は建造コストを抑えるのには格好のコンセプトかもしれません。

「いしかり」や「きそ」をイメージして「きたかみ」に乗船するとガッカリするかもしれません。「いしかり」「きそ」を観光便、「きたかみ」を普通便として別のタイプの船であることを明確にし、料金体系も分ければ(旧「きたかみ」と同様に)、誤解が防げて満足度も上がると思います。


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