日本クルーズ&フェリー学会講演会 (於:大阪府立大学) |
日本クルーズ&フェリー学会の講演会が開催されました。 60人を超える参加者でした。
講演内容(要約) |
@東アジアの現代クルーズ元年の到来 池田良穂(大阪府立大学) |
東アジアのクルーズの歴史 ・1960年代はワールドクルーズの日本寄港が唯一のクルーズだったが、1971年にコーラルプリンセスが日本起点のクルーズを開始した。これが東アジアのクルーズの始まりと言える。 現代クルーズ元年 ・中国人をターゲットとしたクルーズは、単価の安さから大型船でないと採算がとれない。 同じクルーズでも中国の販売価格は日本より安い。 ・コスタは寄港地で集客するインターポーティング(上海だけでなく、日本からも、韓国からも乗船客をとる)を採用している。RCIは日本人と中国人の混載に慎重だったが、インターポーティングも検討中。 ・2013年のサンプリンセスは集客が好調。30%は欧米など海外からの予約。欧州クルーズも最初のターゲットは米国人だった。その後、欧州人の乗客が増えていった。 |
ボイジャー・オブ・ザ・シーズの入港効果と拡大戦略 赤井伸朗(大阪大学) |
・国が集めたお金をどのように使っていけば効果的かを研究。 各寄港地の取り組み、状況 博多:入国審査の簡素化が実現。 ツアーの出発、帰着時間が集中して、バスの乗降時間が掛かった 沖縄:ダウンタウンまで至近の専用岸壁が完成。 英語が通じるタクシーがセールスポイント 神戸:CIQが概ね1時間20分から30分。 乗船客が神戸で買物せずに大阪に行ってしまった 長崎:女神橋はボイジャーにとってぎりぎりの高さ 需要拡大のための戦略 (a)各港で起こった問題、課題を他の港でも共有できるようにする (b)ポートセールス専門の部隊を作って、権限とお金を持たせる (c)近接した港間で役割分担をして、無益な競争をしない |
現代クルーズ史における「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」の位置づけ 池田良穂(大阪府立大学) |
・バルト海のクルーズフェリーのよい所を取り込んだ。バルト海のクルーズフェリーでインサイドプロムナードを考案した人を副社長として招聘。 ・ロッククライミングやバスケットコートは、アメリカのショッピングセンターでもポピュラーな施設。これらをそのまま船上に持ち込んだ。 ・発展型のオアシス・オブ・ザ・シーズは、スタンダードからラグジュアリーまでの様々なレベルの要求を一隻で賄えるようになってきた。乗船客に差別感を感じさせないことが重要。 |
これからの観光とクルーズ 大黒 伊勢夫 (国土交通省近畿運輸局) |
・日本は、出国者数は世界で10位、アジアで2位。外国人の入国者数は 861百万人(2010年)で世界で30位、アジアで8位、これを2016年に1,800百万人にするのが目標。 ・2012年6月から、大型クルーズ船(乗船客2000名以上)の入国審査の簡素化を試行。6/14長崎のレジェンド・オブ・ザ・シーズの審査は90分で終了(従来方法では3時間)。 ・韓国と台湾は入国審査の簡素化と臨船(入国審査官が入港前に乗船してパスポートを事前審査)することにより、入国審査の所要時間は実質0分。 |
フェリー建造にデザイナーはどう関わるべきか 笠井 統太(Idealogicdesign) http://www.idealogicdesign.jp/ |
フェリーのデザインで意識すること ・船会社の意図の実現、造船所への意図伝達。乗船客の印象に残るインテリア 担当した船 @ナッチャンRera ・標準1200人の定員を800人に抑制、400人分の運賃を如何に他で稼ぐかに苦心 ・船ならばデッキを歩き廻りたい=>インサイドの外周通路の採用 ・エグゼクティブクラスは空港のラウンジをイメージ、シャワーブースの採用 AナッチャンWorld ・今までにないエグゼクティブクラスを考えろ=>エグゼクティブデュオシートは、”お座敷列車”と”まんが喫茶”をイメージ Bほるす->パンスターハニー(改造) ・船齢15年のフェリーの大改造。 トラック甲板をディスコに、避難経路をゲームコーナに ・グッズのデザイン:持って帰ってもパンスターハニーを感じるグッズ ・船体の形に合わせて外観デザイン Cパンスターハニー->ブルードルフィン(改造) ・パンスターハニーであったことを払拭するデザイン ・日本の規制によりそのまま使えない物が多い=>極端にやりながらパンスターハニーの物も活かした(もったいない) ・自分が担当したパンスターハニーを改装するのに寂しさは無かったか? =>ノスタルジックにはまらず次を頑張れ ・船主に引き渡して船が造船所を離れる時が一番寂しい Dシルバープリンセス ・船内のどこを写した写真からもシルバープリンセスと分かるデザイン ・ピンク(プリンセスピンク)とシルバー(シルバーフェリー)のカラーコーディネートの徹底 ・イカ釣りの漁火を大浴場からも綺麗に見せたい=>洗い場の方向を変えて窓ガラスへの写り込み防止 船旅への思い ・駅前のビジネスホテルは止めて、フェリーに泊って夜景を見よう、子供に見せよう。漁火や、夜光虫も綺麗。 ・デザインパースに描いた光景と同じシーンに実際の船上で出会うと、やり甲斐を感じる。 |
乗って、船内で生活してわかる、パブリックスペースの快適性 田中 博 |
・カリブ海の現代クルーズは非日常を求めるが、10日から2週間以上のトラディショナルクルーズでは日常としての快適性が問題となる。 ・バリアフリーは今一歩の船が多い。車椅子が充分通れる通路の確保が必要、特定のフロアーだけでも車椅子対応にすべき。 ・歩き易い階段と、階段や廊下の安全な手すりも重要。 段差を識別しにくい階段は危険。手すりの段差や隙間は女性の指輪を破損させる。 ・動線を無視した床面のデザインや、通路上の障害物には要注意。 |
ガス(LNG)燃料フェリーの現状と未来 総合討論:客船とフェリーにおけるLNGエンジンの可能性 池田良穂(大阪府立大学) |
LNGエンジンの特徴 ・環境対策:SOx:100%減、NOx:80%減、黒煙:100%減 ・地球温暖化対策:CO2:20%減 ・燃料コスト:将来的には20%〜30%減 客船とフェリーにおけるLNGエンジン採用の課題 ・日本のLNG価格は原油連動で、海外より高い ・船価は20%UP、積み込み効率は10%DOWN。 ・燃料補給方法の検討と安全対策。 燃料タンクのデッキへの搭載やカセット方式の採用も有力。 |