日本海周遊の旅
(2002/5/3〜6)

今年のゴールデンウィークは、全日出勤になることを覚悟していましたが、幸いにも連休の後半は世間の人並みに休日が頂けることになりました。しかし、出勤しなくてもよいとはっきり決まったのが連休の直前だったので、旅行を計画し、予約を取るには手遅れの状況でした。そんななかで、新日本海フェリーの北海道航路に残席ががあることが分かり、北海道行きを決意しました。

新日本海フェリーでは、4月に新造船「らいらっく」が就航したばかりで、見学会に参加した人達からも高い評価を得ています。新日本海フェリーに乗船すると決まったからには「らいらっく」を外すことはできません。但し「らいらっく」が就航している小樽〜新潟航路は、連休後半の小樽発便が満席のため、新潟発便に乗船することにしました。

私の住む愛知県岡崎市からは、新潟は不便な所にあります。2つの新幹線を乗り継ぐか、名古屋から飛行機を利用する方法がありますが、いずれも朝10時の出港時刻までに新潟に着くことは難しそうです。前泊するぐらいならと考え、敦賀〜新潟〜秋田〜苫小牧航路で敦賀〜新潟まで区間乗船することにしました。

新潟で1泊した後、お目当ての「らいらっく」で小樽に向かい、そのまま小樽から舞鶴航路で戻るコースを取ることにしました。

船の予約状況は、新日本海フェリーのホームページから簡単に調べることができます。頻繁に更新されているので、ほぼオンタイムに予約状況を知ることができます。ホームページで乗船予定の便の空席を確認し、新日本海フェリーの予約センターに電話を掛けて予約をしました。支払いをクレジットカードにすると、その場で予約番号を貰い、あとは港の乗船受け付けでクレジットカードを提示し予約番号を告げるだけです。

船は、敦賀〜新潟「フェリーしらかば」、新潟〜小樽「らいらっく」、小樽〜舞鶴「フェリーらべんだあ」です。各々タイプの異なる船なので、その点でも3隻乗り継ぐ価値があります。今回はちょっと奮発して、「らいらっく」は特等A、「らべんだあ」は特等の貸切です。貸切料金は通常大人料金の1.5倍です。「フェリーしらかば」は昼間の航海だけなので2等にしました。新潟〜小樽〜舞鶴は回遊割り引き(異なる2つの北海道航路を利用して往復する場合)で各々5%割り引きです。料金の詳細は、新日本海フェリーのホームページを参照してください。


5/3 フェリーしらかば
(敦賀〜新潟)

フェリーしらかば 1994年就航
総トン数:20,555トン
全長:195.4m、全幅:29.4m、
航海速力: 22.7ノット
旅客定員: 926名 
積載台数:トラック186台、乗用車80台

JR敦賀駅では強風の出迎えにあいました。駅前ロータリーの噴水の水が遠くまで飛ばされて来るぐらいの強風です。敦賀駅からフェリーターミナルまでは出港時間に合わせて連絡バスがあります。この日連絡バスを利用したのは、私を含めて3人だけでした。(所要約15分、340円)
フェリーターミナルの建物は新日本海フェリーの好調さを示すような立派な建物で、船との間には長いブリッジが伸びています。「フェリーしらかば」は定刻通りに解纜しました。敦賀港内は強風でいたるところに白波が立っています。これからの航海がかなり荒れるのではないかと覚悟させるほどです。

敦賀港のフェリーターミナルを出港
2等室

2等船客は行き先によって部屋が割り当てられて、新潟行きの乗船客には2部屋が割り当てられていました。私はその一つに荷物の置き場を確保しましたが、20名の定員の部屋に7名の乗船客で、乗船客は少ないようです。先に紹介したホームページの空席案内では、敦賀〜新潟、敦賀〜秋田、敦賀〜苫小牧と、同じ便について各乗船区間/等級毎に状況が表示されています。○:空席がある △:空席がすくない ×:空席がない ように表示されていますが、敦賀〜新潟が△なのに、敦賀〜苫小牧が○と表示されている場合もあります。敦賀〜新潟の乗船客が多くいるとも思えないので、おそらく区間ごとに予め割り当ての部屋(人数)が定められていて、その定員と予約数で○△が決定されているように思われます。

居心地の良いフォワードサロン
船尾右舷側にあるカフェラウンジ

敦賀出港時に心配していた強風でしたが、船が北上するにつれ治まり、やがて静かで穏やかな海に変化していきました。航海中の多くの時間をフォワードサロンで過ごしました。今回乗船した3船の中でも一番広く居心地の良いサロンでした。ただ空調の音が若干気になりました。「フェリーしらかば」には、メインレストランの他に、グリル、カフェラウンジがありますが、今航営業していたのはメインレストランのみで、ただ、カフェラウンジは営業していないものの、自由に利用することができました。レストランの営業時間は1時間だけなので、その時間中に食べなければなりません。内容、値段はフェリーとして標準的ではないでしょうか。さかなのフライを注文したら、それを載せるお皿が異様に冷たい(冷蔵庫に入っていたように)のが残念でした。熱い物を熱く出してくれるだけでも、もっと評価が上がると思います。

新潟入港前、左舷側に陸の明かりが見えて来ました、エントランス横の航路図で確認すると佐渡島でした。今までの持っていた感覚とは異なり、佐渡島は新潟からはかなり西側に存在していることを実感できました。港の入り口で佐渡汽船のフェリーと反航し、新潟港には定刻より10分程早く到着しました。新潟港で下船する徒歩客は私を含め2名だけです。午後11時の到着ではバスの便もないのでタクシー乗り場に行きましたが、客待ちのタクシーは1台もいませんでした。下船客が2名では客待ちのタクシーがいないのもしかたないでしょう。運良く、新潟から乗船する乗客を乗せたタクシーが来たので、入れ代わりに乗車して新潟駅前のビジネスホテルに入りました。(タクシー:約15分、1500円)


5/4 らいらっく
(新潟〜小樽)

らいらっく 2002年4月就航
総トン数:18,300トン
全長:199.9m、全幅:25.5m
主機: 約14,400馬力(10,600kw)×2基
航海速力: 22.7ノット
旅客定員: 892名 
積載台数:トラック146台、乗用車58台

新潟港のターミナルまでは、路線バスの便(約30分、180円)があります。但し、ターミナル内にはバス停は無く、最寄りの停留所から歩いて10分程の距離です。天気予報の通りターミナルに到着してしばらくすると雨粒が落ちてきました。

新潟港で帰りの便の乗船手続きも同時にできるので、新潟〜小樽、小樽〜舞鶴の2枚の乗船券を受け取りました。

新潟から乗船する「らいらっく」は4月から就航したばかりのピカピカの新造船です。「環境に、人に、地球資源にやさしい」をキャッチフレーズに建造された21世紀型旅客フェリーです。船幅を既存船より狭めたスリムな船体にして、出力の小さなエンジンでも同じスピードがでるように設計されています。これにより燃費の向上と排気ガス中のNOX価の軽減が図れています。一方、船内のバリアフリー化や、船内の真ん中にドンとあるエレベータ、2等寝台に一人用ブースを設けるなど様々な乗客のニーズに合う設備が成されています。

舞鶴〜小樽航路には1884年就航の「フェリーらいらっく」が健在で、同じ会社のなかに「らいらっく」が2隻いて、非常に紛らわしい状況になっています。名前に「フェリー」が付いているのが以前からある「らいらっく」で、新造船には船名に「フェリー」が付いていません。

「らいらっく」のエントランスは、すっきりとしていて、広々とした印象を与えます。内装は「フェリーしらかば」を雰囲気を踏襲していて、明るく、華やかで、好感が持てます。今航予約したプライベートベランダ付き特等Aは「らいらっく」のみに設定されています。

特等Aの客室
ベランダから見た出港風景

新潟出港時には小雨が降っていましたが、特等Aの乗船客は各々のベランダに出て、出港風景を見守りました。スイートルームのベランダにはテーブルと椅子が用意されていますが、特等Aにはありません。ベランダの照明は部屋の中から点灯ができます。

「らいらっく」にも3つのレストランがありますが、「フェリーしらかば」と違ってどのレストランもすべて営業していて便利です。

カフェ

カフェは夜22:00まで営業していて、軽食や飲み物が食べられます。営業時間が長いので、何時でも食べられる便利さがあり、食費を抑えたい人にも受け入れられるのではないでしょうか。他のフェリーにも似たようなカフェを持つものもありましたが、営業時間の長さ、メニュー内容、雰囲気から比較すると、「らいらっく」の方が一歩も二歩も勝っているように思います。「らいらっく」と同じカフェが、乗船時間の短い瀬戸内航路にあったら、きっと人気が出るのでないでしょうか。このカフェには部屋の仕切りがないので、休憩場所代わりにも利用しやすいレイアウトです。

メインレストラン
バーベキューガーデン

お昼のメインレストランでは、小鉢の惣菜を均一料金にして、好きな惣菜5品に御飯と味噌汁をセットにした、お得な「バリューセット」もありました。メインレストランの後ろはオープンデッキで、夏の期間にはバーベキューもできるようになっています。

新日本海フェリーの他の船には船尾にプールやジャグジーがありますが、「らいらっく」では廃止されています。一見サービス低下と取られるおそれがありますが、1年のほとんどの期間使用できないプールはフェリーには無くても良いように思います。

フォワードサロン
スモーキングルーム

船首にあるフォワードサロンとスモーキングルームは、この会社では当たり前となった公室です。ベッド代わりにソファーで寝ている人は昔からいますが、最近はサロンのコンセントにパソコンの電源を差し込んで、一画をコンピュータデスク代わりに占有している人がおり、これにも閉口します。

グリルの夕食

船尾右舷側には42席のグリルがあります。船内の各所にグリルの営業案内があって積極的に営業していることが伺えます。グリルはお昼も営業していて、洋食または和食のセット料理が2000円で食べられます。昼食には予約が必要ありません。残念ながらお昼の利用状況を確認するのを怠ってしまいました。どの位の人が利用したのでしょうか。夕食は予約制で午後6時30分からです。多客時には3つの時間帯から選べると部屋の案内には書いてあります。グリルに行くと予約客に合わせてテーブルがセットされています。利用客は9人で1人を除き洋食を注文したようです。洋食、和食ともにグラスワイン付きで5000円です。オードブル、スープ、魚料理、肉料理、デザート、パン、コーヒのいわゆるフルコースで、リーズナブルで満足できる内容です。内装も落ち着いていて、船尾にしては振動もなく快適です。おまけにイルカが遊びに来てくれて感激です。ウェイターのサービスにはぎこちないところもありますが、一生懸命さが伺え好感が持てます。食事後は、出口まで先導して、ドアを開けてくれました。新日本海フェリーのグリルは、十数年前に船仲間のグループ旅行で、「ニューあかしあ」と「ニューしらゆり」で利用したことがありますが、大変美味しい食事だったとの記憶があります。系列会社のクルーズ客船「ぱしふぃっくびいなす」の食事で、あまり良い思いをしてない私は、新日本海フェリーの食事の方に軍配を上げてしまいます。

「らいらっく」は本州から北海道へと常に陸に沿って北上した後、積丹半島を回って、まだ暗い小樽沖に達します。30分早着の「フェリーらべんだあ」が港内で回頭しているのが、船の灯りから推測できます。「らいらっく」もその後に従って、ほぼ定刻通りに小樽港に接岸しました。

ゴールデンウィーク期間中は、札幌行きのバスがフェリーターミナルから運航されます。車のない徒歩客にとっては便利なサービスです。


夜明けの小樽港
「らいらっく」(左)
「フェリーらべんだあ」(右)

小樽の朝は早く午前4時台でも充分に明るく、やがて日の出を迎えます。「らいらっく」と「フェリーらべんだあ」が並んでいますが、横から見ても船形の違いは良く分かりません。空からヘリコプターで見れば細身の「らいらっく」が良く分かることでしょう。

下船後、小樽市内を散歩しましたが、「子供の日」でも早起きの観光客は無く、時折犬の散歩の人に出くわすだけです。お陰で小樽運河を一人占めにすることができました。観光客もようやく姿を表す頃、小樽の東部にある築港のマリーナを散歩しました。ここには「石原裕次郎記念館」や大規模なショッピング街などがありますが、いずれも未だ開店前でした。

>観光客がいない小樽運河
小樽の東(築港)にあるマリーナ

5/5 フェリーらべんだあ
(小樽〜舞鶴)

フェリーらべんだあ 1991年就航
総トン数:19,904トン
全長:192.9m、全幅:29.4m
航海速力: 21.8ノット
旅客定員:796名
積載台数:トラック186台、乗用車80台

出港1時間前にターミナルに入りましたが、既に舞鶴行きの乗船が開始されており、ちょうど新潟行きの乗船が開始されるところでした。舞鶴行きの「フェリーらべんだあ」は埠頭の根元部分に停泊しているので、埠頭の先端部にある旅客ターミナルから、長い「動く歩道」に乗って乗船口に向かいます。

フォワードサロン
シックな階段

「フェリーらべんだあ」に乗船した最初の印象は「暗い」です。これまでの2隻と比べて木目調のシックな内装になっているで雰囲気が大分異なります。天井もかなり低く感じますが、実際に低いのか、感覚なのかは分かりません。何となく狭苦しいエントランスを、ビデオエッグ(中でビデオが鑑賞できる)がさらに空間を狭めています。建造年数では「フェリーらべんだあ」と「フェリーしらかば」は3年のズレですが、この間に新日本海フェリーの内装が大きく変わったようです。フェリーの内装としては、明るい感じの「フェリーしらかば」の方が好ましいと思います。但し、「フェリーらべんだあ」が古いといってもそれは雰囲気のことで、船内は傷みもなくメインテナンス状態は良好に感じられました。

「らいらっく」の横を抜けて出港する
遠くの山には残雪が見える

「フェリーらべんだあ」は定刻通りに離岸しました。前方に「らいらっく」が停泊しているので、スラスターを一杯に効かせて真横に引き出した後、ハードポート・スローアヘッドの号令が掛かりました。

積丹半島を回った後、30分遅れの「らいらっく」が追い付いて来ましたが、やがて「らいらっく」は陸沿いに、「フェリーらべんだあ」は真直ぐ能登半島に進路を向け離れて行きました。携帯電話もしばらくの間使用できません。

「フェリーらべんだあ」の特等室

「フェリーらべんだあ」の特等には専用ベランダは付いていませんが、外のデッキは特等以上の人は入ってこないことになっているので、窓からの景色に障害物はありません。ただ、表示を無視してデッキに入ってくる人がいるので、注意が必要です。この特等室の大きな欠点は空調で、各部屋毎に温度が設定できず、風量のみの調整です。冷房も働いておらず、新鮮な空気も来ていないようなので、午後になると部屋が暑くなっていました。ただ、朝夕が涼しく、また多くの時間をパブリックスペースで過ごしていたので、不快感を感じてきたのは下船直前でした。これがもっと早ければ間違い無くクレームを付けていたでしょう。アンケートにはしっかり書かせてもらいました。

「フェリーらべんだあ」にもグリルはありますが営業されておらず、メインレストランで食事を採ることになります。営業時間は各々1時間です。デッキのプールには未だ水が張られておらず使用できません。「フェリーらべんだあ」には最上階に立派なラウンジがあります。但し、ビデオの上映に使用されるぐらいなので、以後の船ではビデオシアターに変わってしまいました。

入組んだ舞鶴港への航路
舞鶴港に接岸する

舞鶴入港時には多くの船客が船首に出て美しい景色を見ていました。「フェリーらべんだあ」はスモーキングルームの前に出られるのでこういう時には好都合です。舞鶴港への航路は入り組んでいて、船が右に行くのか、左に行くのか直前にならないと分かりません。何度か急角度の回頭した後、イージス艦が停泊する海上自衛隊の舞鶴基地を右に見てターミナルに接岸しました。

ゴールデンウィーク中、フェリーターミナルからJR東舞鶴駅行きとJR京都駅行きの連絡バスがあります。但し、京都駅行きは15名集まらないと運航しない条件付きです。今航は、何とか15名集まったようで、京都駅行きも運航されていました。


特等室比較

番外編として、「らいらっく」と「フェリーらべんだあ」の特等室を比較してみました。

らいらっく フェリーらべんだあ
空調 冷房/暖房/除湿の切り替え可能
温度調節可能
風力の強さのみ切り替え可能
ベッド 布団&毛布 毛布のみ
テレビ 船の位置を表示するチャンネルあり 船の位置を表示するチャンネルなし
お茶セット 湯のみ、グラス 急須、湯のみ、グラス
歯ブラシセット 両船で異なる


GOTO TOP OF LOG02

GOTO HOME