第12回クルーズ客船&フェリー研究会
2000年11月18日〜19日

船会社、造船会社、旅行会社、利用者がそれぞれの立場から意見を述べる「クルーズ客船&フェリー研究会」が開催された。今回の目玉は、スタークルーズ副社長:コン・オン氏と日本クルーズ客船社長:入谷泰生氏の講演だった。

第12回クルーズ客船&フェリー研究会
主催:大阪府立大学海洋システム工学科池田研究室・船と港編集室
日時:2000年11月18日(土)〜19日(日)
場所:大阪府立大学

「クルーズ客船&フェリー研究会」および「クルーズ&フェリー学会」の他の年の講演会概要

■11月18日(土)  
10:00〜10:10 ■開会挨拶  
10:10〜10:50 ■視察旅行報告
・欧州で市場開拓に貢献する超高速カーフェリーの現状
・アイリッシユ海横断航路とカナリー諸島航路
大阪府立大学
池田良穂
10:50〜12:00 ■[フリーディスカッション]規制緩和と日本の旅客船の将来
・10月から始まった規制緩和
・ユニパーサル・スタジオ・ジャパンとフェリー事業、
・離島航路における高速化(事例:隠岐航路)
・高速カーフェリーの現状と将来
13:00〜13:30 ■定期客船の経済性と需要予測法 大阪府立大学
金国成
13:30〜15:00 ■世界のクルーズ市場の分析
大手各社の次世代クルーズ客船 日本海事史学会理事
山田廸生
世界のクルーズ大手、最近の業績[報告] 大阪府立大学
池田良穂
クルーズ客船の現状と需要予測 クルーズ客船の変遷、アジボット、レジャーの中での堵好性 大阪府立大学
田角宏美
オースタル・シップス社の新しい挑戦
プティック・クルーズ船について
オースタル・シップス
小林豊彦
15:30〜17:30   ■日本のクルーズ市場の育成  
日本のクルーズ市場の現状[報告] 大阪府立大学
池田良穂
スター・クルーズの戦略 スター・クルーズ
コン・オン
パネルデイスカッション
「どう爆発させる?日本のクルーズ市場」
コン・オン(スター・クルーズ)、若勢敏美(元クルーズ編集長)
奥坊一広(トラベル・ニユース編集長)、野瀬和宏(大阪市港湾局)
17:30〜20:00 懇親会  
■11月19日(日)
10:00〜11:00 ■最新の船旅事情 日本クルーズ客船
新日本梅フェリー
入谷泰生
11:00〜12:00   ■客船の技術(1)
高速カーフエリーのエンジン「ラストン」 ラストン社、松井鉄工所
客船の耐航性能の経済性評価 大阪府立大学
黒田貴子・池田良穂
旅客船の防火基準 船舶艤装研究所
吉田公一
11:30〜12:30   ■客船の技術(2〉  
三保造船所が建造するユニークな高速旅客船 三保造船所
三保 亨
世界最大のクルーズ客船「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」の建造ピデオ
14:30〜16:30 ■利用者の声  
フェリー活性化への提言の紹介 関西海事懇話会
谷口脩
スター・クルーズ体験報告
世界最大のクルーズ客船「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」乗船報告.他
 


スタークルーズ副社長:コン・オン氏
講演要約

1.日本は人口が多く、国民所得も高いため、今後の需要が十分期待できる。
日本のクルーズ人口は、日本国民の0.25%程度であり、欧米や東南アジアに較べて遥かに少ない。

2.スタークルーズの就航船の乗船率も必ずしも良くないが、日本のクルーズ産業は発展途上であり、成功するまでには時間が必要だ。

3.日本人の特性をただいま勉強中である。
・就航当時トーラスの週末クルーズは3泊だったが、現在の4泊に変更した。従来のスケジュールでは週末の3泊クルーズに乗船客が集中したため、乗船客数を均等にするための措置。週末の4泊なら日本のサラリーマンでも休暇がとれるのではという考え。
・7月〜8月に1週間の中国クルーズを実施したが、思った程乗船客が集まらなかった。日本人には1週間のクルーズ参加は難しいことが分かった。
・中国人は食事に量を求めるが、日本人は量より質に拘る。
・日本人は意外にギャンブルは興味がないようだ。

4.スタークルーズは、常にマーケットに向いて行動している。そのため、急な計画変更もやむをえないと思っている。

5.スタークルーズは、マスマーケットをターゲットし、低料金のクルーズを目指しており、日本のクルーズ各社とは市場は重ならないと考えている。

6.日本人には、まだまだ「クルーズがどんなものなのか」が浸透していないため、1泊〜2泊の”お試しクルーズ”を実施したいが、カボタージュ(外国船による国内間輸送禁止)規定により実現できない。

7.カボタージュ規定のため、スタークルーズの船は必ず外国に行く必要があり、首都圏を起点とするクルーズは未だ実施していないが、レオやヴァーゴなどの25ノット船ならば可能と思っている。

**ふなむしの感想**
スタークルーズ社のクルーズへの取込みは、船旅=ロマンといった甘い物ではなく、儲けることを目的とした真のビジネスとしての姿勢が伺えた。マーケット指向の企業活動は、日本市場への思い切った配船が期待できる反面、儲からないと判断したならば、簡単に撤退してしまうかもしれない不安が残る。「何時でも乗れる」の考えは禁物で、スタークルーズの客船には「乗れるうちに乗っておこう」と思う。


日本クルーズ客船社長:入谷泰生氏
講演要約

1.様々な年令層にも拡大したいが、主なターゲットは高齢者である。

2.飛行機の旅行と比べて、料金は高くないと考えている。船旅の中身をアピールしていきたい。

3.スタークルーズ社やカリブ海の船との料金の違いは、物価の違いや船の大きさの違いがあるのでやむをえない。外国船がレディーメードなら、こちらはオーダーメードである。日本船としての良さを前面に出したい。

4.外航客船協会の活動として、広報宣伝活動に力を入れている。特に旅行会社への教育は重要と思っている。一般向けには、テレビドラマの活用(客船を舞台にしたドラマ)も検討している。

**ふなむしの感想**
スタークルーズ社の就航に対して危機感がないのが心配だ。日本のクルーズ客船の料金が飛行機の旅行と比べて大差ないと考える人は、ほとんどいないでしょう。テレビドラマを見て船に乗りたいと思っても、日本の客船が3隻も世界一周に出かけたら乗る船がないではないですか。


**ふなむしの感想**
スタークルーズ社はカボタージュ規定で日本近海のショートクルーズができないと言い、日本クルーズ客船は日本籍船では低料金は実現できないと言う。日本では安くて良質のクルーズは体験できないのでしょうか?
スタークルーズが日本国内で日本籍船を運行しては如何でしょうか。スタークルーズのスタイルで日本籍船を運行すれば、安価なクルーズも可能では、パイロット料金の節約も可能でしょう。
日本クルーズ客船は、外国籍の船を東南アジアで運行すれば良い。日本語の通じる日本式の船を走らせ、エアー&シーのクルーズを実施すれば良い。


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