暮れも押しせまった12月29日,私は那覇新港の岸壁でフェリー”飛龍”を迎えました。乗船は明日ではありますが,一刻でも早く乗船する船を見たいのと,同岸壁から僚船”玉龍”が石垣島経由で台湾へ出港するのが見たかったのです。玉龍には就航早々石垣島と那覇間に乗船しておりますが,その後船体延長工事をしており,ぜひ共その勇姿をカメラに収めておきたいのです。
飛龍が香港へ行くとのニュースは秋頃知りましたが,その時点では特別関心はありませんでした。というのは,あくまでも内航客船で内航航路に的をしぼって,ある数字に目標を持っていたからです。今年も又100隻乗船せねばと半分義務感の様なものを背負いながら船から船への渡り歩きを続けておりました。もうゴールが見え始めた晩秋のある日,ふと飛龍は内航船だし,香港も沖縄から乗船すれば船内1泊の行程である。船内1泊といえば大阪から四国,九州へと同じ気軽さであると都合のよい方に解釈して,飛龍での香港クルーズを申し込みしました。
簡単にスケジュールを紹介しますと 12月30日那覇港を8:00に出港12月31日17:00に香港着,そして自由行動ののち,1月3日2:00香港発,1月4日15:00那覇着で香港では船内泊を利用,費用は船内食事込みで2等が45,000円,特2等が47,000円,1等が50,000円になっており,2等はご存知ジュータン敷きのマス席である。特2等は1室8名のベット,1等は4名のベットと窓があり,窓側には応接セットが用意されている。私はどのクラスを選ぼうかと迷ったが結局特2等のインサイドに収まった。
パンフレットによると船内では落語会,お楽しみ抽せん会,映画会,琉球舞踊,そしてディナーパーティ等のお楽しみがいっぱいと旅情満点の宣伝文句です。食いしん坊の私は映画会や抽せん会よりもディナーパーティが魅力でした。ステーキはサーロインかナア,トルネードにしようかナア,注文の時にウェイターが乗船客のテーブルをまわり,ちゃんと「焼き具合はどうされますか」と聞いてくれるのだろうか。いやいや船賃を計算すると1日当り1万円もしないから絶望的だろうとは思いながらも勝手に想像しながら床についた。明けて12月30日まだ暗やみの那覇新港の待合所で出国の手続きを済ませ,胸をときめかせながら飛龍のタラップを踏んだ。
ここで飛龍のプロフィールを紹介しましょう。
所属 |
有村産業株式会社 |
資格 |
旅客船兼自動車渡船(国際)近海資格 |
重量トン数 |
3277.1トン |
総トン数 |
8205.4トン |
主要寸法 |
166.3MX22MX8M |
載貨重量 |
2909トン |
航海速力 |
25.5ノット(最大27ノット) |
航海距離 |
5000マイル |
場所柄かアメリカ人の乗客も多い。1/3〜1/4は外国人である。少しは外国航路のムードが味わえそうである。船内の勝手は知っているので荷物を置いて甲板に出た。見送る人も少なく,定刻通り午前8時に出港,すぐに朝食の案内放送があり,レストランへ向う,メニューは別表の通りです。
船内メニュー |
12/30朝 |
ロールパン2個,ジャム,バター玉子,ホワイトサワー(乳酸飲料) |
昼 |
みそ汁,ハンバーグ,ご飯 |
タ |
チキンから揚,肉団子,吸物,缶詰のフルーツ,ポテトサラダ,ビール又はコーラ又はジュース,ご飯 |
12/31朝 |
マス塩焼,生たまご,のり,タクアン,みそ汁(トーフ),ご飯 |
昼 |
シチュー,ご飯,バナナ |
食事が済めば一応船内をぐるりと一巡して,さてと思い特2のベッド(上段)ヘ戻り,荷物の整理が済むと船内をウロウロするばかりで体の置き場所がありません。前の方にラウンジがあるのですが,下級船室の我々は利用出来ぬ様です。あとで気がついたのですが,これだったら2等の方がよさそうです。
もちろん日没と共に始まるであろう紳士と淑女の集まりの様な雰囲気はありません。スーツもタイもお呼びではなさそうです。しかたなく再び甲板にぶらりと出て見ると明るい陽ざしがもったいない程さんさんと降りそそぎ,都会に住む私達が忘れていた様な海の色がまばゆいばかりにキラキラと照り輝いています。日なたぼっこをしながらボーッと海を眺めているといつの間にかウツラウツラとしておりましたが,昼食の船内放送で眼がさめ,例の食事が済むといよいよ体の置く場所がなく惰性で船内をウロウロしてベットで寝るのみです。一刻でも早く香港へ到着せぬかと思いながら週間誌を隅から隅まで目を通し,再び寝入ってしまいました。
今夜はいよいよ楽しみにしているディナーパーティです。一応上着を着用して出ていきます。お盆を持ってセルフサービス形式です。空いた席はないかいナアとウロウロしながら席をさがし,中央部の空席に座わりました。まもなく不器用にお盆を持ちながら外人(アメリカ人)夫婦が私の横にやってきて,What is this a table a vacancies? Yes excuseno. 私はお盆の料理を眺めながら,やはり値段と相談せねばと自分をなぐさめながら食事をしました。隣りの外人はOh chicken!といいながら顔にシワを作り,フォークで皿の隅にもっていきました。私もどちらかというとチキンは好きな方ではないので,食へ残し,早くに引き上げました。
同じ様に船旅を楽しむ目的で乗船している人々ばかりです。一つのテーブルに座った人々とはリラックスして会話を楽しむ様な事もなく過ごしました。食事が済んだら同じレストランで,琉球舞踊の催しがあります。催し物が終わるとグリルバーのカウンターでベルの水割で乗船を記念して一人で乾杯をして休みました。この船旅で睡眠不足が大いに解消しそうです。夜中,台湾海峡通過の折、少し揺れたように思いました。
12月31日,午前7時過ぎに目がさめ,甲板へ出てみる。すがすがしい潮風を頬に受けて一人でラジオ体操をする。朝食を済ませて船内で,今日下船してからのオプショナル・ツアーを募集しているので,水上レストラン アバティーン夕食会3,500円に申し込みをする。その他香港島半日観光,マカオ観光等があるが,船旅が目的の私は観光に縛れる事なくと思い,他はあきらめる。昼頃ジャンクを数多く眺め,いよいよ香港も間もなくである。
荷物をまとめて下船の用意にかかる。案内所ではパスポートを預かる旨の船内放送をしているが,私はマカオへの船旅を予定しているので,名簿に印をしてもらってボーディングパスをもらう。やがて夕ぐれの九竜半島と香港島問の海峡(水道)にさしかかる。オーシャンターミナルを目の前にしながら,モタモタと遅れる事約3時間半,空腹の私は何はともあれ香港島にあるアバディーンの水上レストランでの中華料理を楽しみました。
往航 |
地名 |
残航 |
通過時刻(予定) |
那覇 |
793 |
12月30日 8:10 |
那覇センターブイ |
790 |
8:30 |
阿波連崎 |
774 |
9:09 |
南小島(尖閣) |
564 |
17:55 |
佳嶼(台湾) |
482 |
(現地時間)20:20 |
蓮花峯角(台湾) |
138 |
(現地時間)12月31日10:40 |
大星岩(中国) |
51 |
(現地時間)14:17 |
香港入口 |
4 |
(現地時間)16:15 |
香港 |
0 |
(現地時間)16:25 |
ふあんねるVoy.3 目次へ戻る