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ふなむしのひとりごと(2019)


■ダイヤモンドプリンセスのAIS情報は信頼できるか?(8/22)

クルーズ船やフェリーに乗船したり、船の写真を撮影しに行く場合に重宝するのが、AIS情報を利用した船舶の位置情報サービスです。私のスマホには複数のソフトをインストールして利用しています。

かなり前から気になっているのが、ダイヤモンドプリンセスからの情報です。

位置情報サービスとして代表的なMarinetrafficのソフトで見ると、時々針路があらぬ方向を向きます。船で何らかのトラブル発生かと思いきや、その内針路は正常に戻ります。そんな場合でも、過去の航跡図(Past Track)を表示すると針路(位置情報を線で結んだ)には特別な変化はなく問題なく航行していたことが示されています。AISの針路が誤っていると思われる場合は、決まって針路が北または北東方向を向きます。

何度も見ているうちに、ダイヤモンドプリンセスの針路が正しい方角の1/10になっていることに気が付きました。
このことは、誤った針路が北(0°)から北東(45°)方向を向くことを裏付けています。(本来0°~360°を向くべき針路が1/10になるので、0°~36°で表示される)


※2019/8/10の航跡図
緑色:正しい 赤色:誤りと思われる

VESSEL TIMELINEのメニューでは、過去の船速の変化が表示できますが、時々スピードが急激に落ちます。速度はゼロではなく1ノット~2ノットの微速になっています。正常と思われる前後のデータと比べてみると、問題の時刻のデータは船速が1/10になっています。


※2019/8/21船速の変化

当初この現象を見た時には、Marinetraffic側の問題を疑いました。

各船舶から送信されたAIS情報は、世界各国の陸上の施設で受信され、その情報が集約されてインターネットで配信されています。船舶の近くに受信施設がないとその船舶の情報は配信されません。(※Marinetrafficは有料で人工衛星経由の情報も配信していますが、詳細は理解していません)

一時的にAIS情報がロストした場合に上記現象が発生するかと疑いましたが、まさか数値が1/10になるとは考えられません。おそらくダイヤモンドプリンセス側の問題と思われます。

AIS情報はトータル168ビットのデータの中に、船舶コード、位置、速度、針路などの情報を埋め込んで送信しています。ダイヤモンドプリンセスで誤っていると思われる情報はCOG(Course Over Grand)とSOG(Speed Over Grand)です。COGは船の針路を1/10度単位に換算し12ビットの情報として埋め込んでいます。SOGは船の速度を1/10ノット単位に換算し10ビットの情報として埋め込んでいます。

元システムエンジニアの私としては単純なバグの存在を疑ってしまいます。船の計器から得られた速度と針路の生データからAISの送信情報を作製するプログラムで、値を10倍して単位を換算する処理を入れ忘れた恐れがあります。常に誤っている訳ではないので、条件分岐で片側の処理には10倍する処理が正しく入っているのに、別の側の処理は10倍する処理を入れ忘れたかもしれません。

この問題はダイヤモンドプリンセスだけかと思いきや、日本近海を航海しているサンプリンセスやマジェスティックプリンセスでも発生しており、プリンセスクルーズの船舶に共通する問題です。

お節介にも、過去にこのことをカーニバルジャパンにメールで連絡したことがありますが、無視されてしまいました。メールの送信先が適切でなかったのでメールの趣旨が理解できなかった恐れがあります。

インターネットが当たり前の様に使え、多数の情報を簡単に入手できる時代となりましたが、全ての情報が正しいとは限らないので、複数の情報を見比べて信ぴょう性を確認してから利用するのが賢明です。


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