QE2のパイロットさんとカタフリする
「海の日のつどい」
1999年7月24日

「海の日のつどい」出席者

7月24日、東海地区懇親会を航海クラブ東海支部と名古屋港友の会と合同で開催しました。総勢34名の参加を得て、名古屋栄のNHKビル21階の見晴らしの良いレストランで中華料理を食べながら船や海の話題に花を咲かせました。

今年はゲストとして、伊勢湾水先区の加藤孝夫キャプテンに出席して頂き、興味深い話をお聞きすることができました。その一部を紹介します。

伊勢湾水先区
加藤孝夫キャプテン

名古屋出身の加藤キャプテンは、商船三井のキャプテンを経て、伊勢湾内の各港の出入港を担当するハーバーパイロットとして10年の経歴をお持ちです。

先日NHKの番組「おとなの試験」で関門航路のパイロットさんが取り上げられていましたが、パイロットの資格取得試験の一つに自分の記憶だけをたよりに白紙の上に海図を記していくものがあり、その完成図が海図と完璧に一致しているのを見て驚くと同時にパイロットへの道がいかに険しいかということもかいま見ました。この難関を突破するために、酒好きの加藤キャプテンも受験の前には断酒したそうです。

加藤キャプテンは今年の3月に、QE2の名古屋初入港を担当されました。パイロットの仕事は船に乗り込んでから始まるものと思っていましたが、QE2入港の際には船会社、名古屋港管理組合、海上保安庁などの関係先と早くから打ち合わせを行い入港に備えたそうです。加藤キャプテンはこれらの調整に水先人会の代表として当初から参加してきた関係で、QE2出入港の大役を引き受けることになった(ご本人はやらされたとおしゃっています)そうです。

加藤キャプテンが乗船中の
QE2

名古屋の客船ターミナル(ガーデン埠頭)は地下鉄の駅から近く、交通の便の良さが自慢ですが、QE2は駅からは遠く離れた金城埠頭の貨物船用岸壁に接岸しました。ガーデン埠頭の喫水の浅さと途中にある名港大橋の高さ制限が理由です。我々船キチの間では「あんなところに入港させるのは名古屋の恥じ」という厳しい声も出るぐらいの辺鄙で殺風景なところです。しかしその裏では、安全な入港を図るため係船用ビットを追加設置したり、岸壁の水深が時間ごとにどう変化するかを調べて(水深にほとんど余裕がないため)出入港時刻を決定したり、あるいは乗船客や見物客に良い印象を持ってもらうための岸壁の清掃や花壇の植え替えなど、関係者の方々はかなりのご苦労をされたようです。
入港当日は朝の入港ラッシュを避けるため他の船は早めに入港させ、QE2は少し時間をずらして入港させたとのこと。名古屋港外で伊良湖・伊勢湾担当のベイパイロットから水先業務を引き継ぎますが、ブリッジには東京湾のパイロットも乗船していたそうです。強風のためにQE2からパイロットボートに乗り移れなかったのが理由です。このような事は珍しいことではなく、外国まで便乗することになってしまったパイロットもいるとのことです。

金城埠頭に向かうQE2
(橋の左が着岸場所)

QE2のキャプテンが「舵の効きが悪い」と自認する大きな船体を操って、安全運航を遵守ながらも、乗船客の観光を配慮して接岸時刻を厳守しなければならい。逆に出港の際には、見送りの打ち上げ花火が良く見えるように、船を回頭する位置まで注文を出される等、QE2のパイロット業務は、他の船にはない気づかいが必要だったようです。


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