2012 日本クルーズ&フェリー学会
講演会
(2012/11/17)

日本クルーズ&フェリー学会講演会 
(於:大阪府立大学)

日本クルーズ&フェリー学会
設立総会 2010年10月9日
2011新年会 2011年1月29日〜30日
2011講演会 2011年11月12日
新日本海フェリー乗り比べ 2012年7月14日〜16日

クルーズ客船&フェリー研究会
第14回 2010年2月27日
第13回 2002年7月13日
第12回 2000年11月18日〜19日


日本クルーズ&フェリー学会の講演会が開催されました。 60人を超える参加者でした。

講演内容(要約)
@東アジアの現代クルーズ元年の到来

池田良穂(大阪府立大学) 
東アジアのクルーズの歴史
・1960年代はワールドクルーズの日本寄港が唯一のクルーズだったが、1971年にコーラルプリンセスが日本起点のクルーズを開始した。これが東アジアのクルーズの始まりと言える。

現代クルーズ元年
・中国人をターゲットとしたクルーズは、単価の安さから大型船でないと採算がとれない。 同じクルーズでも中国の販売価格は日本より安い。
・コスタは寄港地で集客するインターポーティング(上海だけでなく、日本からも、韓国からも乗船客をとる)を採用している。RCIは日本人と中国人の混載に慎重だったが、インターポーティングも検討中。
・2013年のサンプリンセスは集客が好調。30%は欧米など海外からの予約。欧州クルーズも最初のターゲットは米国人だった。その後、欧州人の乗客が増えていった。
ボイジャー・オブ・ザ・シーズの入港効果と拡大戦略

赤井伸朗(大阪大学)
・国が集めたお金をどのように使っていけば効果的かを研究。

各寄港地の取り組み、状況
博多:入国審査の簡素化が実現。 ツアーの出発、帰着時間が集中して、バスの乗降時間が掛かった
沖縄:ダウンタウンまで至近の専用岸壁が完成。 英語が通じるタクシーがセールスポイント
神戸:CIQが概ね1時間20分から30分。 乗船客が神戸で買物せずに大阪に行ってしまった
長崎:女神橋はボイジャーにとってぎりぎりの高さ

需要拡大のための戦略
(a)各港で起こった問題、課題を他の港でも共有できるようにする
(b)ポートセールス専門の部隊を作って、権限とお金を持たせる
(c)近接した港間で役割分担をして、無益な競争をしない
現代クルーズ史における「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」の位置づけ

池田良穂(大阪府立大学)
・バルト海のクルーズフェリーのよい所を取り込んだ。バルト海のクルーズフェリーでインサイドプロムナードを考案した人を副社長として招聘。
・ロッククライミングやバスケットコートは、アメリカのショッピングセンターでもポピュラーな施設。これらをそのまま船上に持ち込んだ。
・発展型のオアシス・オブ・ザ・シーズは、スタンダードからラグジュアリーまでの様々なレベルの要求を一隻で賄えるようになってきた。乗船客に差別感を感じさせないことが重要。
これからの観光とクルーズ

大黒 伊勢夫
(国土交通省近畿運輸局)
・日本は、出国者数は世界で10位、アジアで2位。外国人の入国者数は 861百万人(2010年)で世界で30位、アジアで8位、これを2016年に1,800百万人にするのが目標。
・2012年6月から、大型クルーズ船(乗船客2000名以上)の入国審査の簡素化を試行。6/14長崎のレジェンド・オブ・ザ・シーズの審査は90分で終了(従来方法では3時間)。
・韓国と台湾は入国審査の簡素化と臨船(入国審査官が入港前に乗船してパスポートを事前審査)することにより、入国審査の所要時間は実質0分。
フェリー建造にデザイナーはどう関わるべきか

笠井 統太(Idealogicdesign)
http://www.idealogicdesign.jp/
フェリーのデザインで意識すること
・船会社の意図の実現、造船所への意図伝達。乗船客の印象に残るインテリア

担当した船
@ナッチャンRera
・標準1200人の定員を800人に抑制、400人分の運賃を如何に他で稼ぐかに苦心
・船ならばデッキを歩き廻りたい=>インサイドの外周通路の採用
・エグゼクティブクラスは空港のラウンジをイメージ、シャワーブースの採用

AナッチャンWorld
・今までにないエグゼクティブクラスを考えろ=>エグゼクティブデュオシートは、”お座敷列車”と”まんが喫茶”をイメージ

Bほるす->パンスターハニー(改造)
・船齢15年のフェリーの大改造。 トラック甲板をディスコに、避難経路をゲームコーナに
・グッズのデザイン:持って帰ってもパンスターハニーを感じるグッズ
・船体の形に合わせて外観デザイン

Cパンスターハニー->ブルードルフィン(改造)
・パンスターハニーであったことを払拭するデザイン
・日本の規制によりそのまま使えない物が多い=>極端にやりながらパンスターハニーの物も活かした(もったいない)
・自分が担当したパンスターハニーを改装するのに寂しさは無かったか?
 =>ノスタルジックにはまらず次を頑張れ
・船主に引き渡して船が造船所を離れる時が一番寂しい

Dシルバープリンセス
・船内のどこを写した写真からもシルバープリンセスと分かるデザイン
・ピンク(プリンセスピンク)とシルバー(シルバーフェリー)のカラーコーディネートの徹底
・イカ釣りの漁火を大浴場からも綺麗に見せたい=>洗い場の方向を変えて窓ガラスへの写り込み防止

船旅への思い
・駅前のビジネスホテルは止めて、フェリーに泊って夜景を見よう、子供に見せよう。漁火や、夜光虫も綺麗。
・デザインパースに描いた光景と同じシーンに実際の船上で出会うと、やり甲斐を感じる。
乗って、船内で生活してわかる、パブリックスペースの快適性

田中 博
・カリブ海の現代クルーズは非日常を求めるが、10日から2週間以上のトラディショナルクルーズでは日常としての快適性が問題となる。
・バリアフリーは今一歩の船が多い。車椅子が充分通れる通路の確保が必要、特定のフロアーだけでも車椅子対応にすべき。
・歩き易い階段と、階段や廊下の安全な手すりも重要。 段差を識別しにくい階段は危険。手すりの段差や隙間は女性の指輪を破損させる。
・動線を無視した床面のデザインや、通路上の障害物には要注意。
ガス(LNG)燃料フェリーの現状と未来
総合討論:客船とフェリーにおけるLNGエンジンの可能性

池田良穂(大阪府立大学)
LNGエンジンの特徴
・環境対策:SOx:100%減、NOx:80%減、黒煙:100%減
・地球温暖化対策:CO2:20%減
・燃料コスト:将来的には20%〜30%減

客船とフェリーにおけるLNGエンジン採用の課題
・日本のLNG価格は原油連動で、海外より高い
・船価は20%UP、積み込み効率は10%DOWN。
・燃料補給方法の検討と安全対策。 燃料タンクのデッキへの搭載やカセット方式の採用も有力。



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