海の日の集い(2003/7/20)

東海地区の船好きが毎年「海の日」に名古屋港に集まって親睦を深めています。関西や関東からも参加者を得て、合わせて30人の盛会になりました。今年のゲストは太平洋フェリーの元船長 西山キャプテン。貨物船乗船時の想い出やフェリーの船長としての苦労話をお聞きすることができました。

見晴らしの良いポートビル内の会議室で、
西山キャプテンの話を聞く

太平洋フェリー元船長 西山キャプテン
講演内容(要約)

貨物船時代の想い出

西山キャプテンが船乗りになろうと思ったきっかけは伊勢湾台風。多数の船が被害にあいましたが、貨物船の一隻が三河湾で陸に乗り上げてしまいました。西尾の中学校で新聞部員だった西山少年は、船を訪問し船長にインタビューすることができました。威厳のある船長は優しくインタビューに応えてくれ、おまけに食事を御馳走してくれました。物が豊かでない当時のこの体験は西山少年を、外国へ、船乗りへ と進ませることになりました。

西山キャプテンが最初に乗船したのは、中国航路の貨物船。日本と国交のない当時の中国では、上陸すると毛沢東語録を持って研修をうけたり、農場見学することもありました。ある入港の時、新米だった西山航海士が参考と勉強のために作った港内見取り図を机の中にしまっていたところ、これが中国の憲兵にみつかり、西山さんは留置場行き。船も3日間止められ、大変な目にあいました。

その後、オーストラリアのボーキサイト、東南アジアのラワン材を輸送しました。マレーシアのある港では、村長が娘を船に連れてきて「婿にきてくれたら、このジャングルをお前にやる。」と言われたこともあったそうです。

太平洋フェリーの「現状」と「これからのフェリー」

規制緩和で運賃が自由化され、競争が激しくなりました。特に、乗組員数が少なくコストが低いRoRo船は強敵です。環境問題で海上輸送が見直されつつある状況を追い風に、自社の500台のトレーラーを使って海陸一体の輸送体制を採っていきたいとのこと。また、競争の激しい海運界で生き残るためには、低コスト、省エネ、省力化を一層進めて行く必要があります。

名古屋〜苫小牧を往復すると、ドラム缶約1000本の燃料を消費しますが、船内で使用する水代もバカになりません。1日150トン〜160トンの飲料水をどこの港で補給するかは運航コストに大きく影響します。

「海」という自然相手の仕事では、気象・海象状況に気を使うとのこと。フェリーは、乗船客の安全を確保しながら、定期航路としてダイヤ通りの運航を期待されています。台風が接近してくる時には、3日前くらいから食事が咽を通らなくなるそうです。「台風は嫌い」を強調されていました。出港前に風が強くなるのも嫌なものです。出港の遅れはそのまま入港遅れに繋がってしまいます。逆に風が強くタグボートを手配していたところ、出港時にピタっと風が止んで、タグボートが無駄になることもあります。強風が吹いても気にならない強力なスラスターと、遅れが出ても挽回してくれる強力な主機があれば、船長は大分楽になるそうです。

客室面で今後重用視されるのは、バリアフリーと快適性です。バリアフリーは既に制度化されており、今後建造されるフェリーはバリアフリー化を進める必要があります。快適性では、冷房能力の向上と各々の部屋での快適な室温コントロールが重要とのこと。また、最近著しい乗船客の個室化指向にも対応していく必要があるとのこと。

北海道からの貨物の多くが生鮮食料品です。ドライバーや荷主からの、貨物としての食料品の品質管理への要求が厳しくなって来ました。乗船客だけでなく、貨物への気配りも今後のフェリーには必要です。

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太平洋フェリーが計画中の新造船のコンセプトは「南太平洋」。きっと、これまでのフェリーを凌駕するフェリーとなることでしょう。


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