「ソング・オブ・フラワー」の旅 

大川敏


 私が今回「ソングオブフラワー」に乗船しようと思ったのは『「ソングオブフラワー」は素晴らしい船だよ』という評判を多くの船旅仲間から耳にしたからである。「ソングオブフラワー」は1991年版の「W0RLD,WlDE,CRUlSE」で5スタープラスに選ばれており、現在5スタープラス級(シーゴッテスI・U、サガフィヨルド、ビスタフィヨルド、ロイヤルバイキングサンなど)10隻余の中でも我々日本人には最も親しみ易く、しかも一番身近で乗船できる唯一の客船である。船籍はバハマで春・秋・冬はシンガポール海域、そして夏にはアラスカクルーズを行い日本にも年に1〜2度その姿を見せてくれる。総トン数8,282トン、定員172人の客船としては比較的小型の船である。船のオーナーは川崎汽船で日本郵船の「クリスタルハーモニー」同様海外で活躍する出稼ぎ船なのだ。私は今回の航海を通じて単なる航海記ではなく、自分なりに乗って感じた事を素直に書いてみようと思う。そして私の提言が少しでも船会社に届いてくれれば幸いです。

 私は1992年5月15日PM1:00横浜の大桟橋より憧れの「ソングオブフラワー」に乗船した。
 PM4:00サンデッキでは乗客にシャンペンと紙デープが配られ、続いてフィリピーノのバンドによる軽快な演奏が奏でられる。一方、プールサイドてはクルーズスタッフが乗客を巻き込み楽しいダンスが始まる。色とりどりの風船が空に舞う。乗客とスタッフとが本当に一体となった楽しい船出である。ここで出港についての私の提言であるが今夏乗船した「飛鳥」では出港の際「蛍の光」の合唱をしたが、私は現在のクルーズ船の出港にはこの曲はどうも似合わないと思う。クルーズの最終日の夜にでも歌うなら……(実際本船ではクルーズ最後の晩のショーでスタッフ達が手をつなぎ英語で歌った)とにかく出港の時にはもっと明るくて楽しい「聖者の行進」とか「錨を上げて」といった曲をどんどん演奏してもらいたいと思う。それからもう一言、各船会社の考え方はまちまちであろうが、出港の時のシャンペングラスはプラスティックではなくガラスのグラス(本船はもちちろん後者)を使ってもらいたいものである。これなどちょっとした船会社の乗客サービスの現れだと思う。ただデッキでグラスが割れたりする心配はあるが……。

 「ソングオブフラワー」はPM4:30横浜ベイブリッジを通過。私は荷物を整理する為船底(Fグレード)のキャビンに戻る。さっそく「DAlLY MELODY」に目を通す。今回の船旅仲間は「船旅さん今日は」の小島氏(船キチ30年余の大ベテラン)と元アメリカ空軍の井口氏(現在はアメリカの年金を受給)と我々夫婦の4人である。特に井口氏の風貌は日本人だが彼のアクションや、たどたどしい日本語を聞くとやはりアメリカ生活40年の長い歴史を漂わせるものがある。彼は出港でのシャンペンを飲み過ぎその日1日泥酔。
 夕食はPM7:00、今夜のディナーはギャラクシーダイニングルームの中央寄りの4人テープルをオーダーする。この食堂の下がちょうどエンジンルームに当たる為振動が少し気になる。食堂は設計上大体どの船も下層のデッキに設けられているが、今まで乗った「飛鳥」や「おせあにっくぐれいす」の方が若干静かな印象を受ける。テーブルは2人掛けから8人掛けまで4パターンあり船客の二一ズ(個人客、家族連れ)にいつでも対応出来るようになっている。テーブルとテーブルの間隔が少し狭い気もするが、日本船に比べれば本船はゆったりした方かもしれない。

 さて、ここで「5スタープラス」の称号について自分なりに考えてみたいと思う。「5スタープラス」とは船の外観、サービス(食事、アトラクション)、キャビンの快適度・衛生面、乗組員の乗客に対する態度など400以上のチェックをクリアーした船に与えられる称号である。ここで私なりに「ソングオブフラワー」を採点してみよう。

 @船の外観であるが、これは人それぞれの好みがあるので判断しがたい。「クリスタルハーモニー」や「飛鳥」といった流線型の船型、「クラウンプリンセス」みたいなズングリ型、あるいは「ロッテルダム」のような重厚で一時代前の船型と実に様々である。私はこうした中でやはり船の形としては「飛鳥」のような華麗な姿が好きである。但しこの評価は私の偏見と独断。
 Aキャビンについては私達の船底の部屋はバスは無いもののシャワー付き、ベッドはツイン(船会社のはからいでベッドがドッキング。家内は少々不満そう)さほど悪くない。難点を言えば洗面台のシンクが小振りで水が外にこぼれ易い。ちょっと改善してもらいたい。「ソングオブフラワー」の船名にちなんでテーブルの上の花は新鮮でキャビンとマッチしているが、どの船も多分同様だと思うがキャビンスチュワードが毎日水替えまでしないので下船する頃にはひどいもの。ダイニングも同様である。私の家内に言わせると、今は差し口の狭い花瓶に花を生ける時「オアシス」というものがあるそうで、それを利用すれば花瓶が倒れても水がこぼれる心配はないし、花も多少は長持ちするとの事だが----。5スタープラス級の船ならば乗船時から下船する時まで折角の美しい花を維持する努力をして貰いたい。今夏乗船した「飛鳥」はダイニングにオアシスを使っていた。本船のキャビンのテーブルの上にはいつもウイスキー、ブランデーが瓶ごと置いてあり、果物も絶えず無くなると補充される。さすがだ。
 B船旅の中で最もウェイトを占める食事全般について考えてみよう。最近は船の大型化が主流となり食事も2回に分けられ、ワンシティング、セカンドシティングのツーシティング制が大旨採用されている。昔の船はツーシティング制の上セットシティングになっていたが、最近はどうもフリーシティングが主流の様だ。ここでフリーシティング制がいいか、あるいはセットシティング制がいいかの問題だが、たまたまオブザベーションラウンジで「ソングオブフラワー」のオフィサー(パーサーとドクター)の2人に聞いてみると2人共フリーシティングに賛成だと言う。理由を聞くと「セットシティングにするとテーブルが固定され、より多くの乗客と知り得るチャンスが少なくなるから」だそうだ。これには私も大賛成である。折角同じ船に乗り合わせたのだから様々な人々と触れ合いたいものだ。それからフリーシティングにした方がダイニングスチュワードの数が少なくて済むといった船会社側の考えを聞かされ納得。
 C本船の乗客サービスで特筆できるのは、24時間体制で乗客に対応してくれる事である。今回の航海で私はルームサービスをしなかったが、本船は如何なる時間(深夜など)でも乗客の二ーズにかなったサービスを行っている由、このあたりはさすが5スタープラス級の貫禄か。
 D食事については朝食はフルーツ(このフルーツが完熟していて美味しい)、飲物はビュッフェスタイルで各自が自由に取れる様になっているが、メインディシュ(但し7日ともメニューは同じ)はスチュワードにオーダーする形式である。昼食はバイキング。夜はというと、毎回テーブルごとにクルーズアテンダント2人(女性)がテーブルに来てその日のメニューを一つ一つ丁寧に説明してくれる。このサービスは私にとってちょっと有難い様な有り難くない様な…。やはり船旅ではメニューを見であれこれ悩みながらオーダーするのも楽しいと思いますが…。
 ところで横浜を出港して2日目の朝、我々のテーブルにちょっとしたハプニングが舞い込んできた。それというのも東京の某放送局が最近の船旅ブームに目を付け、外国船で働く女性にスポットを当てた番組制作の為乗船してきたのである。今朝は我々のテーブルでアテンダントがメニューの説明を行うシーンの録画が行われた。前述したクルーズアテンダントの女性5人の中の一人である浜口典子さんは大学を卒業後、本船に働き始めてちょうど1年だそうです。なかなか活発でチャーミングギャルである。私が彼女に「どうしてこの仕事を選んだの?」と間いてみると彼女いわく「休暇が沢山貰えるのがとても魅力的です。3ヶ月乗船して1ヶ月休みが貰えるのでオフの時には海外旅行を楽しんでいます」との事。現代っ子らしい発言である。本船には彼女を含めて5人の日本人クルーズアテンダントが働いていますが、いずれも外国人を相手に仕事をしているせいか言葉使いや接客態度も大変良く笑顔を絶やさぬ対応には関心させられる。彼女達は「こうした行き届いたサービスをするには毎日の仕事は実にハードです」と私に漏らした。偶然私の隣室が浜口さんの部屋だったが、夜など電話が鳴り通しだった。とにもかくにも彼女達には精一杯頑張って貰いたい。
 E「ソングオブフラワー」のエンターテーメント(ショータイム等)はディナーがPM7:30より9:30の為ショーの開演はPM10:00からである。我々のテーブルはいつも話題豊富で10時近くまで食事。そのままショーヘ。他船に比べてショータイムの開始時間が少々遅い。ただ私から言わせてもらえば2時間ゆっくり時間をかけて食事をしそれから1時間素晴らしいショータイムを満喫出来る事は船旅ならではの事。これには大満足。したがって毎日ベッドに入るのが午前様になるのも仕方がないか…。ショーの内容は毎晩客を飽きさせない様にプログラミングされている。特にクルーズディレクターのJ.Jスチュワード氏のサービス精神には頭が下がる。外国のショービジネス界での厳しさを彼は痛感しており、如何にしたら乗客に楽しんでもらえるかを心得ているようだ。それというのもある夜の彼の演出が大変素晴らしかったからだ。今回の航海は日本人客が大半の為、先ず彼の十八番のトランペットで今の若い人には馴染みがないであろう大津美子の「ここに幸あり」をソロで演奏した。彼の心深まる演奏に私達はステージに釘付けにされた。次に彼はやかんを取り出しやかんの口の部分を使いまるでトランペットの様な音楽を奏でた。クルーズディレクターもショーを盛り上げる為、一人のエンタティナーとして精一杯自分の能力を発揮し、むしろ他のエンタティナーより感動を覚える。こうしたお客様を楽しませるテクニックを日本の客船のクルーズディレクターも少しは学んで欲しいものである。
 Fバーについてであるが、私は酒はあまり強い方ではないがAM10:00よりオープンしているのは有り難い。ジョギングした後デッキで飲むビールは美味い。これは船旅ならではの事。デッキを吹き抜ける風を感じながらビールを飲む気分は正に最高だ。「飛鳥」・「にっぽん丸」などはPM2:00以降しか(以前は夕方しかオープンしなかった)バーがオープンしないが、日本の船もAM10:00ぐらいよりオープンしてもらいたい。酒キチには大変喜ばれると思います。もちろん飲む方もマナーを心得ての話ですが…。
 Gライブラリーは船が小型な為仕方がないかと思いますが、もう少し広い面積を取って欲しい。又ビデオライブラリーの品揃えは1週間単位のクルーズ船なら何とかまかなえるかも。

 「ソングオブフラワー」は5月16日神戸から10数人の乗客を乗せる為PM6:00に接岸。出港までわずか2時間余りである。神戸港では乗船のみで我々は下船出来ず。神戸からの乗客がメインロビーで手に手にシャンペングラスを持ち皆期待に満ちあふれた顔をしている。「ソングオブフラワー」はPM7:30神戸より韓国の済州島に向け出発。済州島到着は5月18日PM8:00である。

 5月17日AM10:00どの船でも乗船した翌日に行うボートドリル。本船のスタッフにより手際よく説明が行われ、短時間のうちに無事終了。このお決まりのボートドリルも今年の5月の「オイロパ」のように実際に海難事故に出会った事を思うとゾーとする。AM10:30ビンゴ大会に出席。ビンゴ1シートに付き10ドルで2シート購入。1枚で4回程ゲームが楽しめる。本船のビンゴゲームは外国船の為掛金も配当も全て現金で貰えるのが大変魅力。従っで乗客も力が入り、大声で「ビンゴ!」と叫び活気づく。デジタルビンゴボードも良いが本船のように1回1回ボールをかき混ぜ選ぶという方法も時間がかかるがそれなりに面白い。本日最高額を手にしたのは、360ドルを稼いだ若い女の子であった。

 17日の昼食は小島氏、井口氏と我々夫婦の4人である。3食ともワンシティングなので2時間以上かけてゆったりと食べられる。ツーシティングと異なり時間を気にして食べる必要はない。それにワインはもちろんアルコール一切フリー、酒キチには実に有り難い。その上どの場所でも腰掛けると「What Drink?」と注文を間きに来てくれる。
 「飛鳥」などはこちの方からウェイターを捜しその上サイン。

  17日午後天気は快晴。済州島に向けて航海中。春5月だがデッキに吹き抜ける風は肌寒い。サンデッキに10分と腰を降ろしていられない。さて本船のデッキスチュワードは大半がフィリピーノである。ちょうどデッキで知り合ったフィリピーノのアーノルド君もその一人で実に人なつこい。この船に乗船する前はMOの「にっぽん丸」で丸1年働き、昨年の秋から本船に乗船しているとの事。彼は『「にっぽん丸」は良かった』と口癖の様に言う。私が「どうして?」と聞くと『「にっぽん丸」はオフの時にはコンファレンスルームで仲間と食事をしたりカラオケを歌ったりした』と。その上彼はこう付け加えた「本船はGOOD SHlPではあるがSMALL SARALYだ」と。彼は「GOOD SHIP」ではなく「GOOD SARALY」の方が魅力があるのだ。

 5月17日の夜は船長主催のキャプテンディナーだ。先ずカクテルパーティがメインラウンジでPM6:30より始まる。このパーティーは客船にとって最大のイベントである。メインラウンジには定刻の少し前から正装した紳士・淑女が集合している。タキシード姿もあれば麗やかな着物姿や素敵なドレス姿の御婦人もいる。メインラウンジの入口では順番にキャプテンとジュディー(歌手)と並んで記念撮影が行われる。150名近くの乗船客と1人1人握手をしてくれる。全員がメインラウンジに入り終えた後、J・Jスチュワードにより先ず本船のキャプテンが紹介され、ラウンジ中央のダンスフロアーに登場する。そして次々に船長以下のオフィサーが紹介される。ところで本船のスタッフ(オフィサー)はほとんどノルウェー人である。船長もパーサーもそしてドクターもそうである。ホテル部門はドイツ、イタリア、オーストリアといったノルウェージャン以外の人達で構成されている。この船は18カ国145名のクルーにより運営されており、もちろん日本人のクルーズアテンダント(女性5名)もその中に含まれる。
 余談になるが船のサービスの1つの基準としてよく乗組員一人に対する乗客数が言われる。ちなみに社団法人「日本外航客船協会」の資料によると、昭和海運の「おせあにっくぐれいす」が1.7人、日本郵船の「飛鳥」が2.4人、同じく郵船の「クリスタルハーモニー」が2.0人。今回の「ソングオブフラワー」はクルー145名に対して乗客150名ということは、ちょうどクルー1人に対して乗客はほぼ1人ということになる。このあたりにも5スタープラス級が窺われる。

 閑話休題、カクテルパーティーも盛況なうちに終わり、乗客はギャラクシーダイニングルームへ移動した。今夜のディナーは幸運にもパーサーと同席のディナーである。テーブルは6人掛けで私達夫婦とクルーズデスク(セゾングループ)の20代の青年と横浜から乗船された塗装関係の会社に勤めている御夫婦である。私達は食事中パーサーとほとんど会話出来ず。他の方は英語が堪能で我々の語学力の無さ痛感。パーサーはノルウェー出身の温和な感じのする紳士である。以前ロイヤルバイキングラインでも働いていたとの事。今夜も豪華な料理が運ばれてくる。またちょうどこの日はノルウェーの独立記念日にも当たり、パーサーがディナーの途中「アクアビット」をスチュワードに注文する。アクアビットは度数41度で主としてノルウェー、スウェーデンなどで愛飲され、最近はクリスマス・誕生日やNEW YEARパーティ等で飲まれる祝酒である。この酒は「スコール」と言い一気に飲むのが礼儀だそうだ。パーサーはもちろん平気な顔で飲み干し次に又お代りした。私は喉が焼ける様な感じがし一気飲みは出来なかった。ノルウェージャンは絶えず相手から身を守らなければいけないという習性(バイキングの血が流れているのだろう)から目は絶えず正面を見て飲み千す。パーサーもやはりそのような飲み方をした。私は今夜のメインディッシュとして「BREAST OF CAPON POWPADORE」を注文。日本語に訳すとザリガニの身を鮭で巻いてそれにロブスターソースがかけてある料理。大変美味であった。その上料理の盛りつけに対する心配りには感心させられる。昭和海運の「おせあにっくぐれいす」も日本では“グルメ船”として有名だが、私は料理に関してもやはり「ソングオブフラワー」に軍配を上げたい。これはお世辞ではない。ディナーの後、アマポーラ(日系2世の歌手)のショーを楽しみカジノへ。ルーレットで少し儲けてキャビンへ戻る。

 5月18日、早朝目を醒ますともう船は済州島が目前に見えていた。済州島は私は3度目であるが、家内は初めてだ。済州島は韓国の中で一番人きな島で、島の中央には韓国で最も高い「MT.HALLASAN」と呼ばれる火山がある。そして、この島は韓国では温暖な為ハネムーンのメッカである。本当にどこに行っても新婚さんばかり。昔からのチマチョゴリ姿の女性はほとんどおらず、ペアールックもしくは日本人の新婚さんと変わらない装いである。クルーズアテンダントの中の1人であるイアン(ビンゴやディスコでの音楽担当)は34才で独身なので彼はうらやましそうな顔をして眺めていた。私達夫婦はクルーズオフィスで「半日観光」の予約をしていたのでマイクロバスで「民族博物館」や「三姓穴」「我羅洞木石苑」などを巡り夕方「ソングオブフラワー」に帰船。

 済州島は定刻通りPM6:00に離岸、横浜に向けて出港した。済州島を出港した夜は恒例の「マスカレードパーティ」である。私達夫婦は少々恥じらいもあったがこのパーティに参加することにした。(乗船時に放送局から依頼を受けていた)このマスカレードパーティとは日本語に訳すと仮装大会で乗客が思い思いの衣装を着て、衣装の奇抜さや面白さを競うものである。クルーズ船によっては「ファンシードレスコンテスト」と呼ぶ所も有る。乗客の中にはわざわざこの日の為に衣装を持ち込む人(今回は阿波踊りの衣装一式揃えていた方もいた)もいるぐらいで、クルーズ船の楽しみの一つでもある。かなり昔の話で大変恐縮ですが丁度今から20年ほど前“マルコポーロ”という船に乗り合わせた析、日本人数人で参加したパーティで日本的なものをやろうという事になり「フェスティバルオブジャパン(オミコシ)」というタイトルで半日がかりで衣装を用意し、お神輿を作った。記憶は定かでないが確か優勝した事を覚えている。この頃はクルーズという言葉も日本ではあまりメジャーな言葉ではなかった。仮装大会には私は悪魔風の格好をし、家内はアルプスの少女ハイジ風の可愛い女の子。家内はメイクをクルーズアテンダントに依頼、なかなかの出来ばえで私も感心する。パーティは準備の整った人から順次ナイトクラブ・ディスコ入口に集合している。参加者は30〜40名位。その中には放送局のスタッフも混じっている。J・Jスチュワードも夕一ザンの扮装をして参加者を迎えている。仮装大会の審査員は事前に乗客の中から選ばれた王様と女王様(2人とももちろんそれなりの扮装をして)。参加者はディスコの音楽に合わせて踊る。その中からベスト6が選ばれ私も幸か不幸かその中に残った。神戸より乗船し西宮に住んでいる正木さん御夫妻は2人ともベスト6の中に入った。最終的には正木さんの御主人が優勝した。勝因は踊りや衣装ではなく、借りてはいた短パンのボタンがはまらず安全ピンで急遽止めたももの激しい踊りの為はずれ片手で持ちながら踊っていたものの、後ろからパンツが丸見えで大爆笑。これが審査員に認められたようだ。



 5月19日丸1日波静かで順調に横浜に向けて航海を続ける。午後からは横浜から乗船した荒川氏のキャビンにて“プライべートパーティ”に参加。参加者の1人より戦前の氷川丸のメニュー(昭和14年3月30日)を拝見する。それを見ると50数年前の船旅が目に浮かぶようだ。こんな古いメニューがよくも残っているものだと感心する。

 5月20日航海6日目、横浜に向けて航海中の夜、フェアウエルパーティが行われた。もうこの時期になると乗客の多くが顔見知りになりデッキで会っても自然に挨拶がかわせる。これぞ船旅ならばである。しかしあと1日で下船しなければならないと思うとふっと寂しさが心を過ぎる。フェアウエルパーティはウェルカムパーティとは異なり楽しさと寂しさが混じり合い一種独特の雰囲気を感じる。ビートのきいた音楽に合わせて皆々が思い出を胸に秘めながらディスコで踊る。PM12:00を回った所でクルーズスタッフの呼びかけで一同がダンスフロアーに集合し「蛍の光」を大合唱。私もあと10数時間すると横浜かと思うと私の脳裏に今まで楽しかった6日間の出来事が走馬燈のように回り始める。今夜のミッドナイトビュッフェは本船の粋な計らいでそばやにぎり寿司が出る。フィリピーノの板さんが巧みな手さばきでその場で寿司をにぎるのをみてびっくり。板さんに「どこで覚えたの?」と聞くとたどたどしい日本語で「東京の上野で覚えた」と聞いて更に驚いた。今夜は最後のカジノ(ルーレット)をちょっと楽しみ床についた。翌朝目を醒ますともう「ソングオブフラワー」は横浜港の港内に入っていた。横浜を出てから7日目の朝である。船が岸壁に近づくにつれて又次の船旅が心によぎる。私はいつかもう一度「ソングオプフラワーに乗ろうと」と心の中でつぶやきながらジントニックを飲みほす。

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