ザ・おせあにっく ぐれいす  

瀬戸内海・関門クルーズ 平成2年5月10日〜12日   

大川鈴子


 私は「ふあんねるVoy.1」から編集に携わっている編集者(大川 敏)のワイフです。よろしく。昨年の12月に「ふあんねる」グループのメンバー全員が幸運にも「飛鳥クリスマスクルーズ」に乗り合わせ「ふあんねる」復刊が話題になり、その上、小島公平さんの尽力を得て復刊することが出来、大変嬉しく今後とも続刊されることを切に望みます。

 私は、主人と新婚旅行でカリブ海クルーズをして以来、主人一人で船旅をエンジョイすることはありましたが、結婚8年目にして「おせあにっく」に二人で乗船する機会を一昨年の春5月に得ることが出来ました。
 私は、まだ船旅に関しては若葉マーク付きなので、船旅での失敗談などを中心にお話ししたいと思います。
 前述した様に10年前のカリフ海クルーズが私と船との初めての出会いです。でも、その時は船旅には全く興味がなく、新婚旅行の過程の一部にしか考えていませんでした。幸いな事に船酔いは有りませんでしたが、日本人は私達二人だけ、食事の時は6人テーブルでもちろん私達以外はカナダ人夫妻とワシントンの新婚さん、ウェイタ一は黒人。テーブルの上にはフォークとナイフが幾つも並べられ緊張し通しで、早く下船して次の目的地ディズニーランドに行きたいと思い続けて1週間遠ごしたことを覚えています。

 最初の船旅がそんな具合だったので「おせあにっく」の船旅にも私はあまり積極的ではありませんでした。主人からの多少の船に関する知識は有ったものの、船に酔わないだろうかとか、どんな物を用意したら良いのだろうかとか、そして、最終的にはこれだけのお金を使うならば日本の何処かの温泉でのんびりと過ごしたいなあとか。でも、結局主人一人で楽しむのも侮しいから思いきって付き合ってみようと乗船することにしました。

 そして、先ずフォーマルドレスが必要だという話になり、主人にデパートのフォーマル売場に連れて行かれ(この時だけは普段と逆の立場)その時の私の驚いたことといったら。何!これは!という感じてした、そのコーナーにある洋服の中で主婦感覚で選ぼうとすると、どうしても普段も着れてその上ウェルカムパーティーでも着れるものと考えると、それに相当するものはあまり無く決まらず、最終的には面倒になり、借り衣装にでもしようかと主人に話すと、彼いわく「遊び心で選んでみたら!それにまた乗船する機会も有るだろうから買った方が経済的だよ。」と言うアドバイス。そこで、主人と売場の係の人の意見をブラスして、私としては少々納得できぬ洋服を買いました。
 その私が昨年12月に「飛鳥」、今年5月に「ソング・オブ・フラワー」、8月に「飛鳥」と船旅の楽しさを私なりに知ると、お洒落もその中の一つになり、船旅のたびに今回はどんなドレスにしようかなあと考える自分が今ではとても不思議です。そして、洋服を買ってくれる主人に感謝!!
 とにかく納得の出来ない洋服を持ち、神戸まで行き、神戸港に着くなり接岸している「おせあにっく」を見て少々落胆。というのも、「豪華客船」という言葉だけで自分の頭の中で自分勝手にふくらませていたイメージとは異なり、想像していた大きさより小さな客船で、しかも全体像は私の体型と同様ぽっちゃりとしてあまり見た目が良くなかったからです。とにかく複雑な思いで乗船。天井の低さ、船独特の匂いで不安増す。

 今では多少の船の揺れは気にならなくなりましたが、当時は船酔いこそないものの、2日とも昼夜ほとんど寝れませんでした。今でも思い出すと自分でも笑っちゃいますが、船の揺れがどうしても気になり眠れないので、ベッドから降りて床に転がってみたり、色々自分の体が揺れない様に工夫したつもりですが、結局船自体が揺れているのですから床に寝ようが、体の向きを変えようが、船の中にいる以上自分の身体が揺れない様にするのは絶対不可能な事ですよね。まあ、海の中に飛び込めば別ですが------。
 でも、その時の私としては必死。主人はいびきをかき熟睡。私と船の揺れとの戦いは1時間以上にも及び四苦八苦してクタクタ。その内に眠れない自分自身に腹立たしくなり、暖っている主人を起こしてフロントに行ってもらいトラベルミンを2日とも貰ったもののほとんど眠れませんでした。そして落ち込んでいる私にムチ打つかのように事務長は「これくらいの揺れは揺れの中には入らない。」とお叱りの弁。下船した時も、何度も「今回のクルーズの船揺れは揺れの中に入らないんですよ。これくらいの揺れで寝れないでドウシマス!」と最後まで忠告を受け恥ずかしさの上に悲しさまでが加わり、頭を下げながら「おせあにっく」をうらめしくにらめつけました。今でもあの事務長の厳しい顔はしっかりと覚
えています。

 そんな寝不足の私ですが、その割には食欲は倍増。食欲というのは、睡眠と無関係の様ですよ。私の場合は。そして、美味しい食べ物があると食欲は目から沸いてくるのを実感しました。それを実証するかのように主人が驚くほどの食べっぷり。それもそのはずディナーの時のフランス科理の見事なこと。味は勿論、盛りつけがとても繊細。手をつけて崩してしまうのが借しいという感じ。ボリュームもほど良い。お昼はというと中華・洋食・和食のバイキング。それも、それぞれ各種中途半端ではありません。神戸で積んだと思われる牛さしや日本そば、シューマイ、日本人の好みに合った洋食。それはそれはお昼にしてはリッチで、しかもディナーの時とは違い、お昼時にふさわしく胃にもたれない様な品々。この時ばかりはとダイエットもおあずけにして食べるや食べる。自分でも驚くほどお腹に入る事。誰が何と言おうと食事に関しては私としては大満足。これも斉藤シェフ並びにコック達の努力の賜物だと思います。それにプラス小型客船の利点を生かして、寄港した港・港で新鮮な物を吟味して積込むというシステム。だからこそ、あんなに美味しい牛さしも舌づつみ出来たのでしょう。それにシェフの話では、お客様の中にはフランス料理ばかり続くので、ラーメンやお茶漬けが食べたくなる方もあるそうで、そういうオーダーにも心良く答えで下さり、しかも無料。また、フィッシングを楽しんだ時釣った魚をその人の要望によって調理して食卓に出して下さるとか。そういう点には恐れ入ります。そこにシェフの人間味が表れていると思いませんか。そして、そういう点から見ると「おせあにっく」の乗客に対する誠意が感じられます。
 少々恐縮ですが、お腹一杯食べ続けるものですから、当然人間の生理現象として、上から入れれば下から出さなければなりません。ところが、環境が変わった上揺れている中での用たしは私としては大変苦しみました。寝るとき同様に色々工夫してみたりしても汗だくになるだけ。最近は慣れましたが------。


 食事の内容とはうって変わってショータイムや娯楽面はお粗末。その当時はショータイムといってもバンドの演奏でダンスを踊る程度、運動面はというと、何せ小型客船の為スペースが無いので、デッキで輪投げ程度。夏とか暖かい所のクルーズならばブールやジャグジを使用することも出来まずが。トレーニングジムも極小規模。従って食事と食事との間の時間の持て余し。私は体重も乗船時と下船時とでは2kg増。こういう点は「飛鳥」と類似していると思います。「飛鳥」は大型客船の割りには、勿論大部分を客室に費やしている為、人数分の娯楽施設が不十分、色々な催し物をしても、乗船人数が定員数の半分以上の場合は色々な面での段取りの悪さが目立ちます。
 「おせあにっく」も送られてくる会報誌を見ると、一昨年と同じソムリエやマジシャンのソロモンなどの顔を見ると懐かしくもう一度乗船してみたいなあという気持ちになりますが、何しろ値段が高すぎます。8月にビアージエ発刊4周年ということで「おせあにっく」がタイアップして半額位の料金で5組ご招待というクルーズを企画し私共も応募しましたが、応募多数の為10組に増やしたものの見事抽選に外れました。もう少し値段を安くすれば乗船したい人はいるのですから、その点を船会社にも考えて頂きたいと切に思います。
 私の船旅の楽しさは、まずストレスを解消することが出来るという点にあります。時間というものの規制がなく、食事・洗濯などの主婦業一切廃止、その上、普段とは違う自分なりのお洒落が出来ます。そして、人と人との暖かい交流があります。「おせあにっく」でも偶然テーブルが一緒になった神戸の天野さん御夫妻とは今でもお付き合いをして頂いています。

 最後に「おせあにっく」での初日のディナーでのハプニングを披露します。私も中年なので、典型的な中年女性の体型をしています。ディナーの時ぐらいはガードルでお腹を引っ込めて少しでもスマートに見せたいと思い、ディナーの際きつめのガードルを身につけ先程の天野さん夫妻と4人でテーブルにつきました。そして、食事を始めて10分程経った頃、ガードルがきつい為食べ物が胃から下に降りていかず、私の顔色はまっ青になり、主人より先に天野さんの御主人の方が私の変化に気がつかれ「奥さん大丈夫ですか?」と言われた時は、頭の中が真っ白になりました。まさかガードルがきつくて気分が悪いとは言えず、思わず一言「船に酔った様です。」と答えるとすぐ親切にウェイターに伝えて下さり、トラベルミン(私の場合は船酔い以外に服用する事が多い)と水を用意して下さいました。とにかくその場をつくろう為に飲みましたが、ガードルのきつさは解消されるどころかドンドン増してくるので、トイレに行く振りをして部屋に戻り、私の苦痛の物を脱ぎ捨てテーブルに戻ってみると、原因を取り除いたわけですから当然顔色も良くなり食欲も出てきました。そして、天野さんに「やはりトラベルミンはすぐ効くねえ」と言われた時は冷汗ものでした。

 それに懲りずに、今年の5月に乗船した「ソング・オブ・フラワー」でもまた同じ失敗を繰り返してしまいました。
 今後も、主人が船キチであり私も多少船旅の楽しさを覚えたので、1年に1度くらいは二人で心身共にリフレッシュする為に船旅をエンジョイしたいと思っています。


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